ギャンブル依存症とは?精神科での治療法についても解説

監修者紹介
別府拓紀
大学病院、精神科病院、専属産業医などを経て現在精神科病院で地域の精神科医療に従事
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別府拓紀
大学病院、精神科病院、専属産業医などを経て現在精神科病院で地域の精神科医療に従事
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1.はじめに

 ギャンブル依存症とは、ギャンブルにのめり込んで生活に支障をきたし、自分をコントロールできなくなる病気です。

ギャンブル依存は、うつ病や不安障害、アルコール中毒などの病気も同時に発症する可能性が高く、最悪の場合自殺や犯罪などに繋がることもあります。

本記事では、ギャンブル依存症のメカニズム、併存症、依存しやすい人の特徴、精神科での治療方法等について解説します。

2.ギャンブル依存症とは

 2021年に行った厚生労働省の調査によると、日本で過去1年でギャンブル依存症になった人は成人で2.2%(196万人)と言われています。

また、海外と比較しても日本は特にギャンブル依存が比較的高いと言われています。



そもそもギャンブルとは?

 そもそもギャンブルとは、結果が偶然に左右されるゲームや競技等ににお金をかけて、勝負を争う行為です。

日本は世界でもギャンブル大国と言われており、カジノはなくてもパチンコやパチスロなどに依存してしまう人は多くいます。

パチンコ以外にも競馬、競輪、オートレース、宝くじ、スポーツくじ、スロットなどが存在します。
一般的には楽しみのためにギャンブルを行いますが、中には、金銭面にダメージを与え、生活にも支障をきたす「ギャンブル依存症」を患ってしまう人も少なくありません。


ギャンブル依存症の特徴

 厚生労働省によると、「ギャンブル依存症は、ギャンブル行動により『やめたくても、やめられない』状態に陥り、 本人や周囲の人たちの健全な生活機能に支障が生じる精神疾患の一つである。」と定義されています。 *1)

頭の中では、これ以上お金を使っては生活に問題が出てしまう、など考えられる損害の大きさについて分かってはいるものの、ギャンブルを続けたいという気持ちがわいてしまいます。

借金を抱えてしまっていることを人に隠すようになり、嘘をついてお金を借りようとしたり、盗みや詐欺行為に走ってしまうことがあります。



ギャンブル依存症の行動の特徴

・ギャンブルにのめりこむ

・掛け金が増えていく

・ギャンブルの依存をやめとうとしても、うまくいかない

・負けたお金をギャンブルで取り返そうとする悪循環に陥る

・ギャンブルについて周りに嘘をついたり、隠そうとする

・もう一回やれば当たるはずと何度も挑戦する

・気がついたら半日パチンコにいる

・身内や知人に嘘をついてお金を借りようとする

・絶望的な気分になり、死にたいとまで思うようになる



ギャンブル依存症の身体症状の特徴*2)

・不安や抗うつ

・不眠

・食欲不振

・胃痛、吐き気

・倦怠感

・下痢、便秘

・頭痛

・肩こり






ギャンブル依存のメカニズム

 ギャンブル依存症は、脳内報酬系の機能の異常が生じている状態です。

私たちがワクワクしたり、気持ちよさを感じる時に、脳内報酬系という神経ネットワークに「ドーパミン」という神経伝達物質が放出され、「元気」「やる気」を感じます。*3)

ドーパミンが減少するとやる気や元気を感じず、無気力状態になることがあります。


ギャンブルを始めて大勝ちをし大金が入った場合、この脳内報酬系が通常よりも強く反応し、ドーパミンが大量に放出されます。

脳内報酬系(道路)でドーパミン(自動車)が通常の速度を守って走っている中、暴走車が走ってきたような感じです。


ギャンブルに依存し始めると、この報酬系は快楽に対して鈍感になります。

通常楽しさを感じる食事などに対して、楽しいと思わなくなってしまいます。


ドーパミンは永遠に分泌されるわけではなく、有限ではないためすぐになくなってしまいます。

そのため、「ギャンブルをしたい」欲求を満たすためにギャンブルをしても、ドーパミンが出ず、物足りなさ・焦燥感を感じ、またギャンブルをし悪循環に陥るのです。





ギャンブル依存症の併存症

 ギャンブル依存症は、以下のような精神疾患との合併症がよく見られます。


ニコチン依存

アルコール依存

双極性障害

不安障害


調査によると、一番多い合併症は、ニコチン依存が60%、次いでアルコール依存や薬物依存は58%、双極性障害が48%、不安障害が37%という結果が出ています。*4)


ギャンブル依存症と精神疾患は深く関連していることが言えます。

最悪の状態、自殺願望や犯罪に手をだす危険性もあるため、早めの治療が非常に重要です。



自分の症状がどんな病気に関連するか気になる方は、以下のリンクから症状チェッカーで確認してみましょう。

あなたの気になる症状から該当する心の病気を調べます。

「症状チェッカー」はこちらのリンクから→→→





*1)”ギャンブル等依存症問題の実態調査の 実施方法の策定に係る検討”,国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター,2023-3,https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001113660.pdf, (参照2024-4-1)

*2)”ギャンブル依存症と重複しやすい精神疾患について

”,依存症対策全国センター,https://www.ncasa-japan.jp/notice/duplicate-obstacles/for-doctors, (参照2024-4-1)
*3)”依存症についてもっと知りたい方へ”,厚生労働省,https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000149274.html, (参照2024-4-1)

*4)Felicity K Lorains,Sean Cowlishaw,Shane A Thomas, Prevalence of comorbid disorders in problem and pathological gambling: systematic review and meta-analysis of population surveys,https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21210880/, (参照2024-4-1)






3.ギャンブル依存になりやすい人の特徴とは?

 ギャンブル依存は性格が関係していると思うかもしれませんが、性格は関係がありません。

また、ギャンブル依存の原因についてはっきりと分かっているわけではありませんが、生物学、遺伝、環境の要因が複雑に組み合わさり発症しています。


ギャンブル依存になりやすい人の特徴

 ギャンブル依存になりやすい人の特徴には、以下のようなものがあります。


年齢・性別

全国民調査によると、ギャンブル依存が疑われている人は、男性3.7%、女性0.7%と男性が多いです。*5) 多くが20代の若者や中高年に見られますが、高齢者にもギャンブル依存症の傾向が見られます。

性格

ギャンブル依存において、性格は関係がありません。しかし、衝動性が強い人や強い興奮を求めがちな人、ハイリスクハイリターンを好む人は、他の人と比べてギャンブル依存症になりやすい傾向があると言われています。

環境要因

特に、ギャンブルを始めた初期に、大勝ちをした経験があったり、ギャンブルにアクセスしやすい環境にいる場合、ギャンブル依存症になりやすい傾向があります。

家族や友人の影響

家族や友人にギャンブル依存症の人がいる場合、ギャンブル依存になりやすい傾向があります。

精神疾患

薬物やアルコール依存の人、うつ病、不安障害、双極性障害、強迫性障害、ADHDを持つ人は、ギャンブル依存のトラブルを抱えている人も多いです。




あなたもギャンブル依存症?セルフチェックをしてみよう

 アメリカ精神医学会が作成した精神疾患の診断基準、ギャンブル依存症チェックリストをご紹介します。

5項目以上当てはまる人はギャンブル依存の可能性があります。



①興奮を得るために、賭け金の額を増やしギャンブルをする欲求を持つ。

②ギャンブルを中断したり、中止したりすると落ち着かなくなる。またはいらだつ。

③ギャンブルを制限する、減らす、または中止したりするなどの努力を繰り返し成功しなかったことがある。

④しばしばギャンブルに心を奪われている。(例:次のギャンブルの計画を立てること、ギャンブルの元手を得る方法を考えること、を絶えず考えている)

⑤苦痛の気分(例:無気力、罪悪感、不安、抑うつ) のときに、ギャンブルをすることが多い。

⑥ギャンブルで負けた後、別の日にそれを取り戻しに帰ってくることが多い(失った金を”深追いする”)。

⑦ギャンブルへののめり込みを隠すために、嘘をつく。

⑧ギャンブルのために、重要な人間関係、仕事、教育、または職業上の機会を危険にさらし、または失ったことがある。

⑨ギャンブルによって経済的にどうしようもなくなり、他人に金を出してくれるよう頼む。






*5)”令和2年度 依存症に関する調査研究事業 「ギャンブル障害およびギャンブル関連問題の実態調査」報告書 概要”, 厚生労働省,https://www.ncasa-japan.jp/pdf/document40.pdf, (参照2024-4-1)



4.精神科でのギャンブル依存症の治療と克服ポイント

ギャンブル依存症の治療方法

 まずは「うつ病」など精神疾患が併合していないか検査を行い、重症度を評価します。

また、ギャンブル依存に関連する認知の歪み、ギャンブルを制御する効力感、ギャンブル依存から離脱する変化に向けた準備状態、などの要因を評価する必要があります。


治療方法としては、以下の4つが挙げられます。


①カウンセリング・認知行動療法

認知行動療法とは、「認知」機能に焦点を当て、本人の凝り固まった思考を柔軟にほぐし、新しい物事の捉え方、気づきを発見してもらう治療法です。

専門家と患者が1対1で対話を通じて悩みや感情について話し合う「カウンセリング」を通じて行います。

ギャンブルに対する歪んだ認知に焦点を当て、なぜ依存してしまうのか原因を探ります。例えば、「イライラした時にパチンコに行ったら心が落ち着いた」、「このパチンコ台を使えば絶対当たる」など、その場所や行動を強く信じている場合があります。

自分の考え方の癖や行動パターン、なぜギャンブルをしてしまうのか、自分で認識し、「ギャンブルがなくても生きていける」「ギャンブルがなくても心は落ち着かせることができる」という考え方に変化させていきます。



②薬物治療

ギャンブル依存の治療薬として正式に認識された薬はありません。

ギャンブル依存の治療として効果的な薬として、セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)や気分安定薬などを使います。


セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)

ドーパミンの活性化を抑制し、ギャンブル依存の症状を改善します。*6)

うつ病や不安障害、強迫性障害などの治療に使われます。


・気分安定薬

双極性障害の躁状態とうつ状態の両方の改善に使われます。

脳の神経伝達物質に作用し、神経の興奮を抑制し、ギャンブル依存症の改善に効果があります。



③入院治療

ギャンブル依存が重症化した場合、入院治療を行う場合があります。

ギャンブル依存グループに入り、グループの規則に沿って正しい生活を送ります。

普段の環境から離れ、リハビリテーションプログラムに沿って治療に専念することができます。






ギャンブル依存を克服する際に押さえておくべきポイント

ギャンブル依存を克服する上で押さえておくべきポイントをご紹介します。

・ギャンブル依存は病気だと認識し治療をする

・ギャンブル依存を克服するには約3年はかかる

・他に打ち込めることを探してみる

・ギャンブル関係の友人知人との関係を断つ

・月の支出を明確にし、数字を可視化する


ギャンブル依存の人は、「自分は依存していない」「自分は病気ではない」と認識していないことが多いです。

まずは、「自分はギャンブル依存症なのだ」と認識し、病院で治療に専念する必要があります。


また、ギャンブル依存は短期間ですぐに回復するわけではありません。

精神的な病気であり、治ったと自分で思っても、また再発する可能性があります。

「回復安定期に入るまで3年はかかる」ということを認識しておきましょう。


毎月いくらギャンブルに使っているのか可視化しておくことで、収入のほとんどがギャンブルに使っていることに気がつき、ギャンブル依存が改善されることがあります。

自分が月にどれくらいつぎ込んでいるのか、一度確認してみましょう。





*6)”選択的セロトニン再取り込み阻害剤 (SSRI)等と攻撃性等について”,https://www.mhlw.go.jp/www1/kinkyu/iyaku_j/iyaku_j/anzenseijyouhou/258-1.pdf, (参照2024-4-1)






5.ギャンブル依存症とは?まとめ

 ギャンブル依存のメカニズムから治療法まで解説してきました。

ギャンブル依存は借金地獄になり、家庭の崩壊を含め人間関係や仕事などにおいて、多くのものを失います。

ギャンブル依存は「病気」であるということをしっかり本人が認識し、いち早く精神科で治療をすることが重要です。

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