強迫性障害の症状と治療法

監修者紹介
徳山祥音
熊本大学医学部医学科卒業。 熊本大学病院神経精神科、熊本医療センター精神科などの勤務を経て平成30年より上通りメンタルクリニック院長。 精神科専門医、精神保健指定医。 うつ病、不眠症、不安症、発達障害などを中心に治療経験
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徳山祥音
熊本大学医学部医学科卒業。 熊本大学病院神経精神科、熊本医療センター精神科などの勤務を経て平成30年より上通りメンタルクリニック院長。 精神科専門医、精神保健指定医。 うつ病、不眠症、不安症、発達障害などを中心に治療経験
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0.強迫性障害とは?

 強迫性障害(Obsessive Compulsive Disorder=OCD) とは、自分でもコントロールがきかない不快な考え(強迫観念)が浮かび、それを振り払おうとして様々な行為(強迫行為)を繰り返し行い、日常生活に支障をきたしてしまう不安障害です。

具体例を交えて説明すると、鍵を閉め忘れていないか過度に心配し、何度も何度も玄関を確認したり、自分の体や衣服、部屋を何度綺麗にしてもまだ汚いと感じ洗浄をくり返すといった、いわば過度な「完璧主義」「潔癖」「心配性」といった状態を表します。

強迫性障害は、うつ病や統合失調症と比べ、一般的な認知度は高くありませんが、発病する確率は、およそ100人に2、3人と言われ、100人に1人が発症すると言われる統合失調症よりも多くいることが知られています。

強迫性障害には様々なタイプがあると言われ、その中でも特に多いのは、不潔恐怖・洗浄恐怖・加害恐怖・洗浄恐怖・確認恐怖です。具体的に見ていきましょう。


1.当てはまれば強迫性障害かも?! 〜具体的な症状〜

当てはまれば強迫性障害かも?! 〜具体的な症状〜

不潔恐怖・洗浄恐怖

 いわゆる「潔癖」の極端な状態をイメージしたらわかりやすいでしょう。
自分や家族、あるいは自分の所有物がばい菌などに汚染されているように感じて、十分すぎる回数(時には何十回も)体を洗い続けたり、部屋を掃除したりして、汚いと感じるものを極端に避けようとします。コロナ禍で特にこのタイプの症状が増えています。

加害恐怖

自分の過失によって他人を精神的あるいは物理的に傷つけてしまったかもしれないという心配が大きすぎるあまり、何度も他人に迷惑をかけていないか確認を繰り返したり、先の尖ったペンなどを持つことを避けたりします。
仕事のミスで自分の評価が下げり末代まで汚名を残すかもしれないと言う強迫から、無意味な確認行為を続けるものがあります。

確認恐怖

 ガスコンロの消し忘れ、水道の蛇口の締め忘れ、鍵の開け忘れなど、確認のし忘れで起こるかもしれない事故や災害に心配して、確認を過度に繰り返します
何度確認しても恐怖や不安は消えるどころか、強迫観念がどんどん大きくなっていきます。
自分で確認するのが疲れると、家族に代理で確認させるようになり、家族生活にも支障をきたすようになります。

不完全恐怖

 数や位置が全て揃っていないと嫌な感じがして並べ直したり、文字の形に気になって何度も書き直し、追求し続ける、いわば極限の几帳面の状態です。

強迫性緩慢

 過度な完璧主義で、日常のあらゆる行動を自分の中でしっくりいっていないのでは、と不安になり、過去の行動の確認や未来のシュミレーションをし続けます
今行っていることをやめて次に移ると言う行動の区切りがつかないことが多いです。

その他にも、疫病恐怖、収集癖、不道徳恐怖、懺悔強迫、性的不道徳恐怖なども強迫性障害のタイプとして挙げられます。*1)





強迫性障害の特徴5つ一覧

*1)図解優しくわかる強迫性障害;原井宏明・岡嶋美代


自分の症状がどんな病気に関連するか気になる方は、症状チェッカーで確認してみましょう。

症状チェッカー



2.強迫性障害の人の心の中とは

 強迫性障害を持つ人の中で起こっている心理的機序として、三つの要素が密接に関わり合っています。




強迫性障害の悪循環の表



トリガー

 強迫観念(不安や恐怖)を引き起こす刺激となるもの。ガスコンロ、生ごみなど人によって様々。

強迫観念

 通常なら思いもよらない恐怖や不安。

強迫儀式

 その強迫観念(恐怖や不安)を打ち消そうとするために行う行為。


このトリガーに遭遇した時に強迫観念が惹起され、強迫行為が継続され、その結果さらに強迫観念が大きくなるという悪循環を起こします。*1)






3.強迫性障害が発症する原因

強迫性障害が発症する原因



 強迫性障害の発症には、私たちが生きるために必要な脳の自己防御システムが関与しているという説があります。

私たちの体は生まれながらにして、「自己免疫」と呼ばれるシステムを持っています。

これにより、体の中に侵入したウイルスや細菌といった物質を攻撃し、体の中で悪さをするのを防いでいます。

しかし、この免疫システムが、自分自身の正常な細胞や組織に対しても過剰反応し、攻撃することがあります。
このような疾患を自己免疫性疾患と呼び、1型糖尿病や関節リウマチといった様々な病気を引き起こします。

最新の学説によると、強迫性障害もこの自己免疫性疾患と似たメカニズムで発症している可能性があります。
人間の脳も、外界の様々な災難から身を守るための自己防御システムが発達してきました。
自然界では様々な脅威が人間の周りに立ちはだかっていた上、文明が発達してからも戦争や感染病など、命を脅かす存在から身を守るために人間の脳は適応してきました。

しかし、現代になってそのような危険な存在は日常生活では滅多に見られなくなりました。
その一方でもともと脳に備わっていた自己防御システムは危険に備えて機能しています。

その結果、反動として、起こるはずのない不安や恐怖といった、余計なところに自己防御システムが働いてしまうようになったという説が提唱されています。



強迫性障害の発症にきっかけはある?

 代表的な精神疾患であるうつ病は、環境の変化や大切な人との別れ、ホルモンバランスの乱れやストレスなど、明確なきっかけがあるのに対し、強迫性障害には発症に明確なきっかけがないことが多いです。

いつ、どのようなきっかけで症状が現れたか分からないまま次第に強迫行為がエスカレートし、人によっては何十年も苦しんできたということもあります。

強迫性障害になった人は、繰り返される強迫観念を制御できず、「ここまで気になるのは、手が汚染されているからで、洗って早く綺麗にしなければ」という思考に陥ります。

これを改善するためには、「ばい菌を消そうとする行為自体が病気を維持している原因である」と考えを改め、自分を苦しめているこの症状は、自分自身が作り上げていたことを理解することが必要です。

つまり、強迫行為が強迫観念を作りだすきっかけになっていたということに気づくことが大事です。 言うは易し、で強迫性障害の人がこのような考え方に改善することは一筋縄ではいきません。
そのため、行動療法を行う必要があります。



強迫性障害は治せる?

 薬物療法と行動療法の進歩により、強迫性障害は難治性から改善可能な病気となりました。

ただし、効果や進度は個人差があり、完全な治癒を保証するものではありません。
治療の目標は患者さんの苦痛軽減と生活の向上であり、病気を完全に治すよりも、現状や改善可能な部分に焦点を当て、地道な対処を重ねることが重要となってきます。
患者は物事に囚われやすい傾向があり、ストレスが再発を招きます。
したがって、症状が緩和されても生活リズムの整備や負担の軽減、精神療法の教えを実践することが大切です。


4.強迫性障害の治療法

強迫性障害の行動療法と薬物療法とは

行動療法

 強迫性障害の治療によく用いられる行動療法は、認知行動療法の一つである「暴露反応妨害法」です。

この方法は、強迫性障害の治療において認知(考え方や見方)へのアプローチが難しい場合に活用されます。行動を通じて強迫観念を徐々に取り除いていくアプローチを取ります。

暴露反応妨害法で大事となるのは、恐れられる行動や状況に敢えて挑戦することです。
この挑戦により、発生する不安や恐怖を受け入れ、徐々にその不安に慣れることを目指します。
例えば、強迫性障害の人が恐れる行動やイメージに敢えて立ち向かい、それを繰り返すことで不安を和らげていくのです。

一般的に「不安」は誰もが経験する感情ですが、通常は生活に支障をきたしません。
しかし、強迫性障害の人々は、その不安や恐怖が非常に強烈で、それを取り除こうとするために強迫行為に走るのです。
つまり、不安を放置できない状態に陥ってしまうのです。

ここで重要なのは、不安を無理に消そうとすることが、かえってその感情を強化させてしまう可能性があるということです。
この悪循環を断ち切るためには、敢えて不安な感情やイメージを受け入れ、強迫行為を行わない練習をすることが必要です。

暴露反応妨害法を実践することで、「不安な状況でも実際には恐れるほどひどいことは起こらない」「不安を無視していると、少しずつその感情は薄れていく」といった体験を通じて、自己の不安に対する新たな見方や対処法を学ぶことができます。

この方法は、強迫性障害や不安障害の治療において効果的であるとされていますが、容易なものではありません。

徐々に段階を踏みながら取り組む必要があり、特に症状が重い場合は医薬品を組み合わせながら進めることが重要です。
治療は根気と努力を必要とするプロセスであり、その過程で症状の緩和とともに、新たな自己の理解や成長をもたらすものと言えるでしょう。


薬物療法

 強迫性障害を改善するためには、先述した通り強迫観念を取り除くよう考え方を改善する必要があるので、薬だけで治ることはなく、行動療法が必要となります。

その一方で、薬がなければ治療がなかなか進まないことが多いです。適切な薬をしっかりと使い、行動療法を積み重ねていく必要があります。

一般的に「強迫観念による不安や恐怖を薄れさせる」「気持ちを落ちつけて精神療法を行いやすくする」目的で薬を使っていきます。

強迫性障害では、とらわれている強迫観念を薄れさせていくことが必要です。

最も基本となるのはセロトニンを増加させる抗うつ剤を使用します。
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)と呼ばれる抗うつ剤です。
SSRI はセロトニンを増加させ、うつ症状や不安を軽減する効果があります。
また、セロトニンの不足は強迫傾向にも影響を与えるとされます。強迫性障害に対する正式に適応が認められている薬はデプロメール/ルボックス(一般名:フルボキサミン)、パキシル(一般名:パロキセチン)、アナフラニール(一般名:クロミプラミン)の3つです。

セロトニンに効果が不十分な場合、強迫性障害の治療では、抗精神病薬を追加することがあります。
抗精神病薬は、ドパミンをブロックする作用があります。強迫性障害の患者ではセロトニンだけでなくドパミンの機能異常も関与する可能性があり、抗精神病薬はドーパミンを調整し効果を発揮することがあります。

また、強迫性障害の治療には抗不安剤も有効です。これは強い不安を和らげる薬で、脳をリラックスさせる作用があるため、緊張や高ぶりを鎮めるのに使用されます。





5.強迫性障害の症状と治療法:まとめ

強迫性障害の症状と治療法:まとめ




 強迫性障害についての特徴や治療に関する注意点をまとめていきましょう。

  • 強迫性障害はいわば過度な「完璧主義」「潔癖」「心配性」といった状態
  • 強迫性障害にかかっている人の心理的機序は、トリガーがきっかけとなり、不安や恐怖といった強迫観念が浮かび上がり、それを払拭しようと強迫行為を行うようになる
  • 強迫性障害は薬だけで治ることはなく、行動療法が必要。その一方で薬がなければ、治療がなかなか進まないことが多いため、適切な薬をしっかりと使い、行動療法を積み重ねていく必要がある







    強迫性障害かもと思ったら、、ポイントまとめ






    強迫性障害は個人差が大きいため、もし症状が続いているようであれば、精神保健専門家(心理療法士、精神科医など)に相談して専門的な診断を受けることが大切です。

    症状が日常生活に影響を及ぼしていると気づけば、薬物療法や認知行動療法(CBT)などの専門的な治療を検討しましょう。

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