躁うつ病の人は攻撃的?双極性障害の特徴やサポートの方法を解説

監修者紹介
別府拓紀
大学病院、精神科病院、専属産業医などを経て現在精神科病院で地域の精神科医療に従事
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別府拓紀
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双極性障害とは

 双極性障害は、文字通り「うつ状態」と「躁状態」の2つの極端な気分状態が交互に現れ、気分の波が極端に変化する精神疾患です。
主に「うつ状態」と「躁状態」の2つの極端な気分状態が交互に現れ、気分の浮き沈みが病的なまでに激しく現れます。

うつ状態の時期では、無気力や興味喪失などの症状が現れ、日常生活に対する興味や喜びを感じにくくなります。

一方、躁状態の時期では、興奮や多くのエネルギー、自己過信などが現れ、行動が活発になります。一般的にうつ状態の方が長いと言われています。


発症頻度

双極性障害は、主に20代~30代で発症することが多く、発症頻度は約100人に1人といわれています。うつ病よりは頻度が低いものの、決して稀な病気ではありません。

発見・診断は難しい

症状を持っていたとしても、他人から見ると躁状態を単なる元気な状態としか見れないことが多く、病気であると認識されないことが多くあります
双極性障害は決して本人の性格や心がけによって変えられるものではなく、医学的な治療が必要な脳の病気だということを理解しておく必要があります。


双極性障害とは?特徴まとめ




双極性障害の主な症状

双極性障害の主な症状

 双極性障害の症状は、うつ状態と躁状態の周期が交互に現れることが特徴です。

うつ状態

以下の精神的状態が特徴です。

  1. 無気力: 何事にも興味ややる気を感じにくく、日常の活動や趣味に対する関心が低下します。常に疲れている感じがあり、身体的にも精神的にもエネルギーが不足していると感じることがあります。

  2. 悲観的な考え: 常にネガティブな視点で物事を捉え、未来に対する展望が暗く感じられます。

  3. 自己評価の低下: 自分を否定的に評価し、自己評価が低くなります。自分に自信を持つことが難しくなります。

  4. 睡眠障害: 十分な睡眠が取れない、または逆に過度に眠ることがあり、睡眠の質が低下します。

  5. 食欲変化: 食欲が増したり減ったりし、体重の増減が見られることがあります。

  6. 集中力低下: 物事に集中するのが難しくなり、仕事や学業、日常のタスクに取り組むことが困難になります。

  7. 自己孤立: 他人との交流を避けたり、孤独感を強く感じたりすることがあります。



双極性障害のうつ状態の特徴一覧




躁状態

以下の精神的状態が特徴です。

  1. 高揚した気分: 躁状態では極度な喜びや興奮を感じることがあります。普段よりも活気に満ちているように思えます。

  2. 過度な自信: 自分の能力や魅力を過大評価し、自信に満ち溢れた姿勢をとります。冒険的な行動にも踏み出す可能性が高まります。

  3. 多弁: 言葉がとめどなく出てくるため、話す量が増えることがあります。また、早口で話すことも多いです。

  4. 睡眠の減少: 少ない睡眠でもエネルギーがあるため、通常よりも少ない睡眠で済むことがあります。

  5. 多忙感: 多くのプロジェクトやアイデアに取り組むことに強い興味を持ち、同時に多くのことを成し遂げようとする傾向があります。

  6. イライラや怒りの増加: 躁状態ではイライラしやすく、小さなことでも怒りっぽくなることがあります。


躁状態の特徴一覧




双極性障害の人がとる行動の特徴

双極性障害の人がとる行動の特徴


 双極性障害の主な症状について挙げていきましたが、その中でも特によくみられる行動を見ていきましょう。

些細なことですぐ怒る

感情が昂りやすいため、ちょっとしたことでもイライラが溜まることがあります。それまでは温厚な人だったのに最近怒りっぽくなってきたなと思ったら要注意です。

カッとなって手が出てしまう

うつ状態の時にストレスを正常に処理できなくなると、怒りの感情が抑えきれなくなってしまいます
周囲に暴力として振るわれることもあれば、自分の体を噛んだりかきむしったりする自傷行為を行うこともあります。
周囲の人に迷惑をかけるばかりか、社会的な信用も失うことになりかねないため、注意が必要です。

自殺願望

うつ状態の人は非常に気分が不安定になります。憂鬱な気持ちで沈み込む事も多く、内側にストレスをためきれなくなり、自殺願望が芽生えてしまうこともあります。
些細なことでも、自殺のサインを見逃さないようにしましょう。




双極性障害の人がとる行動の特徴3つまとめ




双極性障害:躁状態でのイライラの対処法

双極性障害:躁状態でのイライラの対処法

 躁状態で自分でもコントロールできないようなイライラが多いなと自覚がある場合は、どのように対処するのが良いのでしょうか。

病院に受診しにいく

自分でも制御できないようなイライラや怒りは、正常の精神状態であるとは言えないので、時間をとって主治医に相談し、自分の精神状態を伝え、薬を処方してもらったり変えてもらったりするのが良いでしょう。

時間をおいて整理する

主治医による治療があった上で、自分でもできることとして、時間をおいて状況を整理することは重要です。

例えば、相手の一つの発言に対して、反射的に込み上げていくる感情があったりしても、それが相手の真意だったかは分かりません。
またチャットなどのメッセージだと、相手の意図と違うように捉えてしまうことも多々あります。実際に相手の言いたいことや思いはそうではなかったのかも、と考え直すようにしましょう。

怒りは二次的な感情と言われ、その感情の前に「寂しさ」や「悲しさ」など、直接ある出来事に想起される感情があるものです。
自分がなぜ怒っているのか、自分自身で分析すると、冷静な精神状態に落ち着くことができるでしょう。

自他尊重のコミュニケーション

自分も他人も尊重したコミュニケーションを心がけましょう。
相手の立場に立って、なぜ相手がそのような発言したかを考慮して、配慮したコミュニケーションを行うと良いでしょう。
また文面だけだとお互いの感情が伝わりにくいので、電話や直接会って話すとより人間関係の修復にも繋がります。




双極性障害:躁状態でのイライラの対処法まとめ






双極性障害を理解する:家族や周りの人ができるサポート

双極性障害を理解する:家族や周りの人ができるサポート3選

症状を理解する

病気に対する正しい知識がないと、当事者をサポートすることは難しいものです。

まずは双極性障害がどのような病気なのか、どのようにして発症するのかを理解するところから取り組むのが良いでしょう。

「心理教育」と呼ばれる、病気に関する正しい知識や情報を心理面の配慮を十分にしながら伝え、主体的に療養を行えるように援助する方法が病院で行われるため、活用するのも有効な手段です。

通院(服薬)の継続をサポート

双極性障害は、他の精神疾患と比較しても再発のリスクが高い疾患と言われています。
症状がある程度落ち着いたとしても、自己判断で通院や今まで飲んでいた薬をやめてしまうのはとても危険です。そのため、主治医に従って服薬をしていく必要があります。

本人が勝手に通院や服薬をやめようとしたら、家族がそれを防ぐように声掛けをしていくことが大事です。

生活リズムを安定させる

双極性障害に限った話ではありませんが、精神疾患の回復には、規則正しい生活が不可欠です。
朝しっかり起きて、一日三食食べて、夜はしっかり眠るといった、安定した生活リズムを守れるように、家族の方がサポートしてあげると良いでしょう。

特に躁状態の特徴として、「極端に元気なので寝なくても平気」と思いがちで、徹夜してしまうことも多いですが、そうした原因による生活リズムの乱れは、双極性障害の治療において天敵といえます。
本人の気づかないうちに体力が削られ、病状の悪化につながることもあるので、非常に危険な行為です。



双極性障害の治療方法については以下の記事で詳しく解説しています。併せてお読みください。

双極性障害の治療法と乗り越えるためのアドバイス






双極性障害を理解する:家族や周りの人ができるサポート3選まとめ






双極性障害の人への接し方

双極性障害の人への接し方

うつ状態における接し方

・休養を取るように促す:
大前提として、うつ症状の回復には休養をとることが重要となります。家事や用事を周りの人たちがサポートして、休養を取るように促しましょう。

・躁状態の言動を責めない:
躁状態の際には本人にとっても不本意な行動をとってしまい、後になって後悔してしまうことが多くあります。
家族からも、なんであんな言動をとったのか、と責めたいような場面もありますが、本人も後悔していることが多いため、更に責めるようなことは避けましょう。

・励ましたり、焦らせるような言動を避ける:
「がんばれ」という言葉は、欠けている側としてはもちろん本人を傷つけようとしてかけるわけではなく、応援しているつもりですが、本人からすると、「自分は頑張っていないんだ」と、ネガティブな発言に捉えてしまうこともあります。そのため、うつ状態の時はそうしたポジティブな言葉も極力避けるようにしましょう。

・自殺のサインを見逃さない:
双極性障害は、自殺のリスクもある病気です。
身の回りの整理や、遺書を書いたり死に関する発言をするといった、自殺のサインを見逃さないようにしましょう。
ここで注意するべきなのは、死にたいといった気持ち自体を否定することはよくないと言われています。
その気持ちをしっかりと受け止めた上で、自殺するという行動自体を否定しましょう。周囲の人でのサポートが難しい場合は、主治医に相談するようにしましょう。




躁状態での接し方

・病院への受診を促す
躁状態の時は、本人は病気だと自覚していないことが多いです。
そのため受診を促しても、反発されてしまうことがあります。
有効な方法は、本人が信頼をおいている人や、上司など目上の人から直接伝えてもらうことです。

・問題のある行動に対処する
躁状態の時は、暴力やギャンブルなど、周囲だけでなく社会的に信用を失うような行為に及ぶことも多々あります。
周囲の人で対処できない場合は、主治医や専門機関に相談するようにしましょう。入院をさせるなどの手段も有効です。




双極性障害の人への接し方6選一覧




躁うつ病(双極性障害)の特徴、サポートに関するまとめ

躁うつ病(双極性障害)の特徴、サポートに関するまとめ

 今回の記事の重要なポイントは以下です。

  • 躁状態を単なる元気な状態としか見れないことが多く、病気であると認識されないことが多く、発見や診断が難しい疾患
  • 躁状態の人はすぐにカッとなったりイライラしたりすることが多いので、その感情に対する対処法を知っておく
  • 家族や周りの人は、まず疾患のことを理解し、通院や服薬、生活リズムのサポートをしてあげることが大事
  • うつ状態の時には休養を促し、行動を責めたり、逆に励ましたりせず、自殺のサインがないか常に注意する必要がある

双極性障害の治療には、ご家族の理解やサポートが非常に大事なので、この記事をご覧になって少しでもそのお役に立てたら幸いです。


自分の症状がどんな病気に関連するか気になる方は、症状チェッカーで確認してみましょう。

症状チェッカー

参考: メンタルヘルス不調で休職・離職している方の復職・就職をサポート|リワークセンター

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