自閉スペクトラム症(ASD)の行動や生活面での特徴を解説

監修者紹介
別府拓紀
大学病院、精神科病院、専属産業医などを経て現在精神科病院で地域の精神科医療に従事
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別府拓紀
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自閉スペクトラム症(ASD)とは

 自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder; ASD)とは、コミュニケーション・対人関係の困難を持つとともに、強いこだわりや、限られた興味を持つという特徴を持つ、発達障害の一つです。

これまで、自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていましたが、2013年のアメリカ精神医学会の診断基準DSM-5の発表以降、自閉スペクトラム症としてまとめて表現するようになりました。

日本人の約100人に1人が発症

 自閉スペクトラム症は多くの遺伝的な要因が複雑に関与して起こる生まれつきの脳機能障害で、人口のうち100人に1人に及んでいるとも言われています。
特に男性に多く、女性の約4倍の発生頻度であると知られています。
女性では知的障害を合併していることが多い傾向ですが、知的障害や言語の遅れを伴わない女性では、社会的困難の現れが目立たないため、見過ごされているケースもあります。

近年、ASDの診断は子どもより大人になってから受けるケースが多くなっています。
自閉スペクトラム症の患者さんの状態像は非常に多様であり、信頼できる専門家のアドバイスをもとに状態を正しく理解し、個々のニーズに合った適切な療育・教育的支援につなげていく必要があります。

スペクトラムとは

 「スペクトラム」とは、「連続体」といった意味を指す言葉で、症状や特徴が幅広く、個々の人において異なる程度で現れていることを指しています。
この言葉からわかるように、ASDは多様な症状と特性を包括する幅広い「スペクトル」内に存在しており、個人によって症状の程度や特徴が異なるため、一概には特定の障害として定義することは難しいと言われています。





自閉スペクトラム症(ASD)の四つのタイプ

自閉スペクトラム症(ASD)の四つのタイプ

 自閉スペクトラム症(ASD)には四つのタイプがあり、それぞれのタイプによって対処法なども変わってきます。
具体的にどのようなタイプがあるか見ていきましょう。

孤立型

 人と話すことに対する関心が薄く、コミュニケーションを取ろうとしても、あまり反応がなかったり、話題を広げたりしようとしないことが特徴です。
人と話したいというよりは、話すことを苦痛に感じ、ストレスに感じることもあります。

そのため人とできるだけ接したくなくなり、集団の中にはいることがあるような場面でも、なるべく関わらないようにしようとします。

行動に出る特徴としては、相手と視線を合わせようとしなかったり、1人で行動したがって集団との行動を合わせられなかったりする、といったものがあります。 


受動型

 集団の中に入るような場面があれば、その中では関わろうとしますが、自分から積極的に他人に関わろうとはしないという傾向があります。
他人から何かを誘われた時、断りたい約束なども断れないことが多く、相手に流されやすい特徴もあります。

そうして他人に流された結果、溜め込んでいたストレスが爆発してしまい、一気に人間関係を断ち切りたくなる衝動にかられます。
その結果、いわゆる「人間関係リセット症候群」というような状態に陥ってしまいます。
このような状態になると、SNSのアカウントを衝動的に削除したり、LINEの友達をブロックしたり、なんの前触れもなく会社を退職したり、音信不通になったりすることがあります。 


積極奇異型

 このタイプの人は、他人に対して積極的すぎて、人とのちょうど良い距離感というものが掴めず、どんどん自分から話しかけたり、その場には相応しくないようは発言までうっかりしてしまいます。例えば、初対面の人に対してタメ口で話しかけたり、家庭の問題など、プライベートな悩みを話したりします。

相手の非言語的な反応を見るのが苦手なため、空気の読めないコミュニケーションを取ってしまい、生活の中で苦労する人もいます。
その一方で、自分の考えを話す力に長けているので、営業マンとして良い結果を残す人もいます。 


尊大型

 積極奇異型と同じように、積極的に相手に話しかけるだけでなく、相手に対して強い態度を取ってしまいます
その結果、自分の意見を押し付けてしまったり、自分の権力を用いて高圧的な態度を取ってしまうこともあります。

例えば、家庭内で大黒柱となる立場になると、家庭内で威圧的な態度を取ってしまったり、会社で上の役職につくと、部下に自分の意見ややり方を押し付け、最終的にハラスメントにつながることにもなってしまいます。



自閉スペクトラム症(ASD)の四つのタイプ4つ一覧





自閉スペクトラム症(ASD)の人が取りやすい行動

自閉スペクトラム症(ASD)の人が取りやすい行動

こだわり行動

 自閉スペクトラム症(ASD)の人は、こだわりが強い特性を持つため、変化に対して異常に嫌ったり、気にいった同じ言葉や行動を繰り返したりする特徴をもちます
具体的に診断基準の一つにもなっている行動の特徴は以下となっています。 


1.常動的な行動 同じような行動を取り続けることを指します。オウム返しや、独特な言い回しなどです。例えば、おもちゃを一列にずっと並べ、並べたら片付け、また並べるなど単純な行動を繰り返し続けます。

2.同一性、習慣へのこだわり 毎日同じ道順をたどったり、同じようなものを食べ続けたりします。

3.限定的な興味 電車だけが好き、魚だけが好き、地図だけが好き、というように、趣味嗜好が限定的です。

4.感覚過敏、鈍感さ 特定の匂いや、セーターのちくちくする触感のような知覚が苦手(感覚の過敏さ)なことがあります。逆に疲れていることに気づかない、熱いお風呂にのぼせるまで入ってしまうなど、鈍感な場合もあります。 


自閉症スペクトラム障害の人が持つこだわり行動は、一見性格によるものに見えがちですが、障害特性によるものであることに注意が必要です。
そのため、周囲からは分かってもらえないことが少なくありませんが、本人も自分の意思でコントロールできずにやってしまうことがあります。

こだわり行動は、脳機能の特性によって、こだわりの対象への非常に強い欲求が現れてしまうものです。
そもそも本人がコントロールできないため、強制的にやめさせようとしたり、叱責したりしても、何度も繰り返してしまい大きなストレスとなってしまい、望ましくありません。
 


常同行動と強迫性障害は違う?

 同じ行動を何度も行ってしまう疾患として、強迫性障害という疾患もあります。

強迫性障害 (obsessive-compulsive disorder) とは自分の意に反して不都合な考えやイメージが頭に繰り返し浮かんでくる「強迫観念」とそこから生じる不安や恐怖を減弱するために繰り返す「強迫行為」を特徴とします。
典型的なパターンを挙げると、外出するときに鍵が閉まっているか不安になり何度も鍵が閉まっているか確認してしまったり、人にぶつかっていないか心配して同じ行程を車や徒歩で数時間も行き来してしまったり、トイレに行った後に自分が汚れたと不安になり何十分も手を洗い続けてしまったりします。

一方で変性疾患や後天性脳損傷に伴う常同行為/行動においては、背景となる強迫観念やそれに 伴う不安や心理的葛藤は伴わず(自我親和的)、行為/行動自体が淡々と続くことが多いです。
さらに、強迫性障害では認めないことであるが、しばしば盗みなどの逸脱行為を伴うことがあるため、強迫といよりは衝動の問題ではないかという意見もあります。*1)

*1) 常同行為/行動とこだわり ;船山 道隆




自閉スペクトラム症(ASD)の生活面での特徴

自閉スペクトラム症(ASD)の生活面での特徴


寝ても寝ても寝不足

 適切な睡眠時間というものは人によって異なりますが、発達障害の人は一般的に睡眠が浅い傾向にあります。
睡眠の質が良くないと、睡眠時間をとっていても寝覚めが悪かったり、寝不足に感じたりすることもあります。
その影響で、日中にも眠気が出てしまい集中できなかったり、居眠りをしてしまうことがあります。 


食事のルーティン化

 朝、昼、晩のそれぞれの献立について、これじゃなきゃ食べたくないと、自分が限定したものしか食べなくなります
こうした特徴は、ASDのこだわり、社会性といった特性から出てくると言われています。
健康のためにはバランスの取れた食事を取る必要があるということが分からず、ただ空腹を満たすためだけの偏った食事になってしまいがちです。
また、食事内容ではなく、お金を貯めることにこだわりをもち、極端な食事方法をとるといったこともあります。  


1人でいる時間が多い

 ASDの人は、一つのことにこだわり、細部に意識がいくことが多いため、独特な世界観や趣味を持つことがあります。
そうした強い価値観に合わない人に対しては、無意識に避けてしまう傾向があり、1人の時間でいることが多くなります。 


騒がしい場所に行けない

 ASDの人に多く合併している疾患として、聴覚情報処理障害というものがあります。
一般的に、人間の脳はガヤガヤした場所においても必要な音と不要な音を聞き分けて、必要な音だけに注意が向くようになっています。
しかし、そうした処理ができない人は、すべての音が同等に耳に入ってくるので関係のない雑音も耳に入ってくるようになり、話を聞きたい相手の声が聞き取りづらくなります
このような状況にストレスを感じることが多いため、騒がしい場所に行くことを苦手とします。 


不安に感じることが多い

 ある出来事や将来に対して、不安を感じることが多いです。想像力の苦手さから、細かいことが気になりすぎて、その他に想像力を分散できないことで起こることがあります。





自閉スペクトラム症(ASD)の生活面での特徴5つ一覧



ASDの診断基準について以下の記事で詳しく解説しています。併せてお読みください。

ADHD(注意欠如・多動症)の特徴について




ASDの人が意識するべきポイント

ASDの人が意識するべきポイント

距離感の身につけ方

 適切な距離感というものは、失敗しながら身につけていきましょう。
ASDの人は、人との距離感がわからなかったり、共感することが苦手なため、人間関係で失敗することが多くあります。
そうした特性によって、距離が近すぎて失敗することもあれば、距離を取りすぎて孤立してしまうこともあります。

失敗を重ねることで、それを元に自分なりの気をつけるべきポイントをわかってくることも多いです。失敗をする中で、少しずつ学びを見つけていくことが重要です。 


無理して喋る必要はない

 先ほど解説した、孤立型や受動型の人は、人と話すことがストレスになりがちです。
そうした状態にも関わらず無理をしてコミュニケーションをとると、心身面で悪影響が出てしまい、塞ぎ込んでしまうこともあります。
そのため、自分自身に負荷をかけすぎず、また職場の相手などにも1人になりたい時があることを伝えましょう。 


伝え方の型を学ぶ

 人との会話の仕方は、基本的にアドリブですが、ある程度マニュアルや枠組みがあった方が、学びやすいです。
具体的にはSDS法、PREP法、DESC法などがあります。そうした枠組みを知っておくと、コミュニケーションの取り方が効率よく上手くなるでしょう。

 




ASDの人が意識するべきポイント3つまとめ




自閉スペクトラム症(ASD)の行動や生活面の特徴 まとめ

自閉スペクトラム症(ASD)の行動や生活面の特徴 まとめ

 ここまでの記事の中で特に重要なポイントをまとめていきましょう。

  • 自閉スペクトラム症(ASD)には大きく分けて「孤立型」「受動型」「積極奇異型」「尊大型」四つのタイプがあり、それぞれのタイプによって対処法なども変わってくる
  • ASDの人がとりやすい行動として、こだわり行動というものがあり、人によって異なるが、主に常同的な行動、限定された興味、ルーティンへのこだわり、感覚過敏といった特徴がある
  • ASDの生活面での特徴として、ルーティン化が多く、1人でいることが好きで、寝不足がちであるといったものが挙げられる

自閉スペクトラム症(ASD)は、根本的な原因を治療することは現代の医療では不可能であると言われています。しかし、ASDの人たちは独特の仕方で物事を学んでいくため、個々の発達ペースに沿った療育・教育的な対応をしていきます。また、かんしゃくや多動・こだわりなどの症状や、合併する精神疾患については薬物治療によって軽減する場合があります。信頼できる専門家のアドバイスをもとに状態を正しく理解し、個々のニーズに合った適切な支援につなげていく必要があります。



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