寝過ぎてしまう原因とは?過眠症について解説

監修者紹介
別府拓紀
大学病院、精神科病院、専属産業医などを経て現在精神科病院で地域の精神科医療に従事
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別府拓紀
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はじめに:寝過ぎてしまう過眠症とは

はじめに:寝過ぎてしまう過眠症とは

 「夜に十分な睡眠をとっているのに、昼間になると眠くて仕方がない」という病気を、過眠症と呼びます。

さらに過眠症の中でもナルコレプシーや特発性過眠症等の様々なタイプに分類されます。

本記事では主にナルコレプシーと特発性過眠症について解説していきます。


ナルコレプシーとは何か?

 ナルコレプシーは、日中の覚醒状態を維持できなくなる疾患です。過眠症の代表例の一つで、日本には約600人に1人の患者さんがいると言われています。
本来だと睡眠の後半で出現するはずのREM睡眠が、入眠直後に出現し、その結果色々な症状が引き起こされます。
ナルコレプシーの方は、ほぼ100%で日中に突然堪え難い眠気に襲われ、居眠りを繰り返してしまいます。


普通の眠気との違い

 健常な人でも、日中食後や退屈なミーティング中など、ふと眠たくなる時がありますよね。そうした時の眠気とナルコレプシーの違いはどこにあるのでしょうか。
普通の眠気とナルコレプシーの眠気の違いは二つあります。


普通だったら寝ないような場面でも寝てしまう

 普通だったら眠らないような、運転中、試験中、大事な商談中などにも急に眠ってしまいます。
このような特殊な環境で寝てしまい、周りから「だらしがない」「常識がない」と思われてしまいます。そういった周りからの評価を気にして、夜の睡眠時間を伸ばしたとしても、結局眠りを繰り返してしまうのがナルコレプシーの特徴です。

夜十分に寝ても日中に寝てしまう

 徹夜明けや睡眠不足で日中寝てしまうことは誰にでもありますが、ナルコレプシーの場合は夜ぐっすり寝ても日中眠気が襲ってきます。ガムを噛んだりカフェインを飲んだり、一般的に眠気対策となるようなこともあまり効果がないと言われています。


ナルコレプシーの原因

 体の状態に応じて覚醒状態を調節するオレキシンという物質の量が、ナルコレプシーの方では異常に少なく、髄液中のオレキシン濃度が測定できないほど低くなっています。
これは脳の視床下部にあるオレキシン産生細胞の働きの低下が関係していると言われています。

ナルコレプシーになりやすい体質を持った人が、ストレスなどの環境因子に脅かされた結果発症すると考えられています。
頭部外傷、手術、大出血、睡眠不足、ウイルス感染など、大きな身体的、社会的ストレスが加わった直後に発症する場合があります。
特有の遺伝的背景を有する人が、何らかの感染等をきっかけにこの病気を発症することがわかっています。

しかし、この遺伝的背景は多くの日本人に見られるものであり、持っているからといって必ずしも発症するわけではありません。
現在のところ予防する手段は残念ながらありません。




寝過ぎの睡眠障害:過眠症の症状とは

寝過ぎの睡眠障害:過眠症の症状とは

情動脱力発作

 日中起きているときに、怒り、恐怖、喜び、笑い、驚きなどの突発的な感情が引き金となって、意識消失を伴わない突然の筋力低下が起こることがあります(情動脱力発作と呼ばれます)。

急にぐにゃりと腰が抜けたり、持っているものを落としたり、地面に倒れたりします。
顎が垂れ下がり、顔の筋肉がひきつり、眼が閉じ、うなづくように頭が動きます。視野がかすむことがあります。
話し方が不明瞭になることもあります。発作自体は一瞬で収まりますが、怪我をしたり、周りから奇妙な目で見られることがあります。

この症状はナルコレプシーに特有の症状なので、情動脱力発作の有無が診断に関わることが多くあります。

入眠時幻覚

 眠ろうとした瞬間に、「人や動物がそばにいる、体に触れる」と感じたり、「体が空中に浮く」といったような鮮明で現実感のある夢を見ることを言います。
これは先述の、REM睡眠が入眠の直後に出現することに起因していると言われています。

睡眠麻痺

 いわゆる「金縛り」のことを指します。半分目が覚めているのに声が出ず、体も動かせず、不安感・恐怖感が生じる症状を言います。
入眠時幻覚に伴って出現することが多く、「幻覚で怖い思いをしたので飛び起きたいのに体が動かない」という状態になってしまうこともあります。




自分の症状がどんな病気に関連するか気になる方は、症状チェッカーで確認してみましょう。

症状チェッカー





ナルコプレシーの症状3つ



睡眠障害:ナルコレプシーの治療とは

 ナルコレプシーの治療は、根治的な治療は確立されていませんが、薬物療法、生活指導が治療の中心となります。

薬物療法としては、日中の眠気に対し中枢神経作動薬(メチルフェニデート、モダフィニルなど)を用い、情動脱力発作に対し抗うつ薬を用います。

また、夜間の不眠、中途覚醒に対し適宜睡眠薬を使用します。


上述の通りナルコレプシーを根治する治療法はまだ開発されておらず、治療は症状を抑えることが中心になります。
症状の種類と重さ、職業や生活パターンを良く踏まえたうえで、内服時間を工夫することが重要です。

また、使用する薬の量は、日常生活への支障を考慮し必要最低限にしなくてはなりません。



特発性過眠症

 ナルコプレシー以外の過眠症に、特発性過眠症があります。
「特発性」とは原因がわかっていないということを指し、特発性過眠症は原因不明の過眠症です。

昼に居眠りをするだけでなく、10時間以上寝ても日中に眠くなります。
特発性過眠症は主に若い成人に見られますが、どの年齢でも発症する可能性があります。

この疾患の主要な特徴は、異常に長い睡眠時間と、昼間に頻繁に眠りたくなる強い欲求です。

通常、患者は夜間の睡眠を充分に取っているにもかかわらず、日中にも何度も眠りたいと感じます。

特発性過眠症患者は、通常の睡眠パターンに比べて10時間以上もの睡眠を必要とすることがあります。
さらに頭痛やふらつき、動悸といった自律神経障害や、認知障害といった症状を合併することもあり、薬が効きにくいことも特徴の一つです。
特発性過眠症の原因は不明確で、特定の生物学的要因や遺伝的要因が関与している可能性がありますが、詳細は解明されていません。

診断には、他の睡眠障害や医療状態を排除するための検査が行われ、特発性過眠症と診断されるためには一定の基準を満たす必要があります。

治療は個人に合わせて計画されることが一般的です。

一般的な治療法には、規則的な睡眠スケジュールの確立、昼寝の管理、カフェインや刺激物質の制限、さらには一部の薬物療法が含まれることがあります。

 しかし、特発性過眠症は完全に治癒することが難しく、症状を管理することが主な目標です。
特発性過眠症は生活の質に大きな影響を及ぼす可能性があるため、早期の診断と適切な治療が重要です。

患者は医師と連携し、個々の症状に合わせた対処法を見つけることが大切です。




寝過ぎてしまう:過眠症のさまざまな原因

寝過ぎてしまう:過眠症のさまざまな原因6選

過眠の原因6つ

 ナルコレプシーや過眠症以外にも、必要以上に睡眠をとってしまう様々な原因があります。


年齢
 一般的に、子どもでは成人と比較して睡眠時間が長くなります。思春期までの年齢であれば、1日当たり9時間以上眠ることもあり、逆に高齢者に近づくほど睡眠時間は少なくなってきます。

体質

 ロングスリーパーと呼ばれる人たちは、体質的に毎日10時間以上の睡眠を必要とします。

発熱

 特定の感染症や炎症性疾患により発熱があると、身体に過度の疲労を起こし過眠を引き起こすことがあります。

生活リズム

 不健康な食事、運動不足、過度のストレス、不規則な生活リズムなどが過眠を誘発することがあります。

精神的な問題

 長期間のストレスやうつ病は、過眠の原因となることがあります。また統合失調症の消耗期では、過眠が特徴的です。

薬の服用

 睡眠薬、精神安定剤を服用していると、起床時にも薬の作用が残ることがあります。アルコールの摂取によっても、眠りの質の低下、翌日の疲労感を引き起こすことがあります。



仮眠の様々な原因一覧



 目安として九時間以上寝ていると寝過ぎと言えるでしょう。一般的に、成人では7~9時間の睡眠が推奨されており、寝過ぎによって様々な症状を引き起こします。



過眠による身体への影響

肥満のリスク

過眠は体重増加のリスクを高めることがあります。過度の睡眠により代謝は遅くなり、運動不足と組み合わされることで、さらに肥満のリスクが高まります。

認知機能低下

 認知機能の低下と寝過ぎの関連性は、特に高齢者において注目されています。長時間の睡眠が高齢者の認知機能の低下や認知症のリスクを増加させる可能性があるとの研究結果が報告されています。

心臓疾患のリスク

 睡眠不足が心臓病のリスクを増加させることはよく知られています。睡眠不足は高血圧、不規則な心拍、糖尿病などのリスク因子と関連しており、これらの要因は心臓病の発症リスクを高めることがあります。その一方で、長時間の睡眠(寝過ぎ)も心臓病のリスクと関連していることが報告されています。虚血性心疾患、高血圧、脳梗塞などの心疾患が代表的です。



おまけ:「寝過ぎで眠たい」は嘘?

 休日に10時間程度寝た時に、起きてからかえって眠たくなることを経験したことはないでしょうか。

寝過ぎた時に眠たいのは、普段から睡眠がしっかり取れていない証拠だと言われています。

脳は睡眠不足の日が続くと、だんだんと麻痺してきて眠たいと感じなくなってきます。

しかし、休日などに長い間睡眠をとると、脳が深刻な睡眠不足になっていると思い出し、急激に眠くなるのです。

なので、たくさん寝てさらに眠たい時は、普段からの睡眠が足りていない可能性がありますので、十分に注意しましょう。




不眠症に関しては、以下の記事でも詳しく解説しています。併せてお読みください。

不眠症の適切な診療科目と受診するタイミング



不眠症に関するまとめ

不眠症に関するまとめ


 ここまでの記事の重要なポイントを振り返ってみましょう。

・「夜に十分な睡眠をとっているのに、昼間になると眠くて仕方がない」病気の代表格がナルコプレシー
・症状として、情動脱力発作、睡眠麻痺、入眠時幻覚があげられる。情動脱力発作は特有の症状なので診断のカギになる
・ナルコプレシーやその他の過眠症以外にも、様々な原因で過眠になってしまうことがある。睡眠不足も問題だが、睡眠し過ぎも肥満や心臓病のリスクがある


 治療と関連して関連して重要なのが、「周りの人がナルコレプシーという疾患の特徴を理解してあげること」です。
ここまで説明したような症状が見られる人が周りにいた場合、「ただ眠ってばかりの人」ではなく、「もしかしたらナルコレプシーなのかな?」と考えられるようになりましょう。

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