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睡眠障害とは?原因と症状を解説
1.睡眠障害とは?

睡眠障害は、正常な睡眠が得られない状態を指します。
睡眠の量(長さ)の不足や、質の低下の他、睡眠のリズムの乱れも含まれます。
睡眠障害が長く続くと、日常生活に支障をきたすことがあります。
さらに、心身の健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。
睡眠障害の主な原因と種類
睡眠障害は、1つの病気ではありません。
原因にも症状にも、様々なものがあります。
例えば、「睡眠障害国際分類」という専門家による決まりがあり、睡眠障害をその病態によって分類しています。*1)
以下の表1には、その分類を分かりやすくまとめています。
表1 睡眠障害の種類

睡眠は、私たちの日常生活の中で、非常に重要な役割を果たしています。
身体的にも精神的にも、健康の維持には欠かせない要素です。
質の良い睡眠をとることで、その日の疲労から心身共に回復し、翌日の活動に備えることができます。
しかしながら、多くの人々が様々な理由で、睡眠の問題を経験しています。
今回は、そんな睡眠障害について、原因や症状、そして対策を詳しく解説していきます。
不眠症の症状と特徴
不眠症は、睡眠障害の中でも一般的なものです。不眠症の症状は、主に3つです(表2)。
表2 不眠症の主な症状

表2に示した3つの症状の他にも、「睡眠の質の低下」という症状を経験する方もいます。
夜を通して眠っているにも関わらず、翌朝に疲れが取れていない感じがするというものです。
高齢者に見られる睡眠障害の特徴
高齢者は生体リズムの変化により、特有の睡眠障害を発症することがあります。
また、病気などの身体的な問題や、そのために使用する薬物の副作用などによっても、睡眠障害が起きやすくなります。
一般的には、高齢者でも勤労世代に比べて入眠障害の頻度は変わらないと言われています。
一方で、睡眠維持困難や早朝覚醒の頻度が増加し、睡眠は浅くなって睡眠時間が大幅に短くなることが分かっています。*2)
参考文献
*1)米国睡眠医学会:睡眠障害国際分類第3版(日本睡眠学会診断分類委員会 監訳)一般社団法人日本睡眠学会 2018
*2)Kim K. et al., Sleep, 23, 41-47(2000)
自分の症状がどんな病気に関連するか気になる方は、症状チェッカーで確認してみましょう。
2.睡眠障害の主な原因と種類

睡眠障害の原因は多岐にわたります。
心的ストレスや生活習慣は、一般的に経験されるものでしょう。
その他に、嗜好品などの物理的な要因や、心身の疾患が関係しています。
ストレスや嗜好品による睡眠障害
不眠症の原因としては、心的ストレスや生活習慣の変化が多いです。
職場や家庭のストレス、人間関係の問題などが原因で眠れなくなることは、多くの方が経験するでしょう。
また、シフト勤務や夜勤、時差ぼけ(ジェットラグ)など、生活のリズムが乱れて不規則になることで、睡眠障害を引き起こすこともあります。
その他に、身体の疾患やそれによる症状が、睡眠障害の原因になることがあります。
例えば、ケガや病気の痛み・呼吸障害による息苦しさ・アレルギーなどによる痒み・ホルモンの異常などが挙げられます。
精神状態に関しても、うつ病・不安障害・統合失調症などの精神疾患に伴う睡眠障害もあります。
また、カフェイン・アルコールや、一部の薬物が、睡眠に影響を与える可能性があります。
不眠症の対策と治療方法
不眠症の対策としては、まずはできるだけ原因を明らかにして、取り除くことができる原因を排除することが大切です。
そして、良好な睡眠習慣を確立し、適度な運動をすることが推奨されます。
不眠症の治療には、後述のように薬物療法と非薬物療法があります。
非薬物療法としては、認知行動療法やリラクゼーション法などが有効であると言われています。
生活習慣の改善と寝る前の注意点
睡眠の直前に食事をとったり、激しい運動をしたりすることは、睡眠障害を引き起こす可能性があります。
また寝る前に明るい電気の光を浴びるなど、日常生活の一部が睡眠の質に影響を与えることがあります。
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3.睡眠障害の治療と薬物療法と非薬物療法

睡眠障害の治療は、薬物療法と非薬物療法に分けられます。
睡眠薬の効果と副作用
睡眠薬は、不眠症に対する効果的な治療方法として普及しています。一方で、適切な使用や副作用に注意が必要です。
睡眠改善のための非薬物療法
まずは、生活習慣の見直しが必要です。その上で、認知行動療法やリラクゼーション法により、睡眠の質を改善することが可能であることが知られています。
精神医学的治療のアプローチ
不眠症だけでなく、抑うつ症状や不安症状が伴う場合には、これらの症状に対する治療も重要です。
そのため、睡眠対策に限らず、精神科的なアプローチが必要になることがあります。
不眠症に関しては以下の記事でも発信していますので、ご参照ください。

4.睡眠障害と嗜好品の関係性

アルコールやカフェインなどの嗜好品は、睡眠の質やリズムに影響を与える可能性があります。
アルコール摂取の影響と睡眠リスク
飲酒によるアルコール摂取は、一時的に眠気を誘発します。しかし、睡眠の質を低下させることが知られています。
コーヒーやタバコと睡眠の関係
コーヒーやお茶類に入っているカフェインには、覚醒作用があります。そのため、過剰に摂取すると不眠を引き起こす可能性があります。
タバコは、含まれているニコチンの作用により、睡眠障害の原因となることがあります。
嗜好品を適切に摂取する方法
寝る数時間前の摂取を避け、それ以前にも適量を摂取するなどの工夫が必要です。

5.概日リズムと睡眠障害

概日リズムとは、私たちの体内時計であり、その乱れは睡眠障害の原因になります。
睡眠リズムの乱れの影響
概日リズムとは、1日を単位とする周期の体内時間と、その変動のことです。
地球上のほとんどの生物が、体内に自発的な時間の発振機構を持っていると言われています。*3)
概日リズムは,睡眠と覚醒だけでなく、血圧、体温、ホルモン分泌などの基本的な生理活動の調整をしています。
社会的生活リズムや環境要因により、元々の概日リズムがずれて、概日リズムに乱れが生じることは「社会的時差ぼけ(ソーシャルジェットラグ)」と呼ばれます。
社会的時差ボケは、睡眠リズムや、前述の様々な生理活動に不調を引き起こします。*3)
そのようにして、睡眠リズムや生理活動が乱れることで、日常生活におけるパフォーマンスの低下や気分の変動がみられるようになります。
また、免疫機能の低下など、多岐にわたる影響が知られています。
概日リズムの調整方法
概日リズムは,周期やタイミングに個人差があり,クロノタイプと呼ばれています。
基本的には、朝型・夜型のクロノタイプに分類されます。
クロノタイプがもつ特性の違いにより、特定の疾患になりやすい場合があることが、専門家による研究で明らかになってきました。
例えば、夜型タイプの方は、気分障害に脆弱性をもつ可能性が考えられています。*3)
いずれのクロノタイプであっても、日常生活による乱れから調整し、健康を維持することが求められます。
具体的には、日中に光を浴びること、適度な運動、規則正しい生活リズムなどが推奨されています。
体内時計の正常化と不眠への対策
睡眠リズムが乱れてしまった場合でも、日光の摂取や適度な運動など、体内時計を維持するのと同様の方法が求められます。
また、リラックスする時間の確保など、体内時計を正常化するための更なる対策も重要です。
それでも不眠が改善しない場合には、薬物療法を含めた睡眠障害に対する治療をご相談ください。

参考文献
*3)概日リズムのクロノタイプと気分障害にかかわるストレスレジリエンス, 早田 敦子, 内匠 透,日本生物学的精神医学会誌32巻4号 Page174-178(2021)
6.睡眠障害について:まとめ

睡眠障害の原因は様々で、多くの人々が経験する問題です。
しかし、生活習慣の見直しや適切な治療より、質の良い睡眠を取り戻すことが可能です。
この記事を通じて、睡眠障害の原因や対策についての理解を深め、質の良い睡眠をとるための参考にしていただければ幸いです。
それでも、もし睡眠に関して何らかの問題を感じた場合は、専門家に相談することをおすすめします。