解離性障害の種類や原因について解説

監修者紹介
別府拓紀
大学病院、精神科病院、専属産業医などを経て現在精神科病院で地域の精神科医療に従事
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別府拓紀
大学病院、精神科病院、専属産業医などを経て現在精神科病院で地域の精神科医療に従事
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解離性障害とは

 「解離」とは強いストレスによって意識と知覚・記憶が分断される状態のことを指し、「原始的に人間の身体にプログラムされた防衛機制」で、ストレス反応の1つであると言われています。

解離の病態メカニズムは、いまだ十分に解明されていませんが、発症の原因としては、ストレスや心的外傷が関係していると考えられています。

災害、事故、暴行やパートナーの不倫、離婚などの一過性のものもあれば、性的虐待、長期にわたる監禁状態や戦闘体験など慢性的に何度も繰り返されてきたものもあります。

こうした体験による精神的ダメージから離れようとして、無意識のうちに精神機能の一部を停止させ、その結果記憶喪失や、多重人格など様々な症状が現れるといわれています。

こうした症状が深刻で、日常の生活に支障をきたすような状態を解離性障害といいます。

このままだとイメージしづらいので、具体的な疾患について解説していきます。





解離性障害の症状

解離性障害の6つの症状

解離性健忘

非常に強いストレスを受けた結果、その時の記憶がなくなる、というものです。
具体的には離婚や浮気をされた時、などあまりにもショックなことがあり、その時の喧嘩の記憶などがバッサリと抜けてしまいます。
あるいは、結婚生活のことだけがバッサリと抜けてしまいます。
「仕事の記憶が抜けてしまう」といった患者さんも時々います。記憶に空白期間がみられますが、その長さは数分から数十年にも及ぶ場合があります。

解離性遁走(かいりせいとんそう)

解離性遁走では、過去の記憶の一部またはすべてを失い、通常は家族や仕事を残して普段の環境から姿を消してしまいます。(「とん走」とは「脱走」や「逃避」を意味します。)
東京に住んでいたのに突然失踪して沖縄で見つかる、といったものです。

転換性障害

転換性障害は、昔は一般的にヒステリーと呼ばれていた病気です。
転換性障害は、身体的には疾患などの問題がないのに、随意運動機能(自分の意思によって行う運動)や感覚機能に異常が現れる障害です。
なんだかよくわからないけれど手足が動かない、手足が痛い、お腹が痛い、といったものです。
病院に行くと「身体には問題がないので精神科に行ってください」と言われるとき、この症状であることが多いです。 これも意識と知覚が分断されている状態です。

離人症

離人症というのは周囲の出来事や人々、自分自身に対して現実感がなくなり、夢の中にいるような奇妙な感じに襲われる症状です。
意識がどこか「分断」されているように感じます。一時的なものもありますが生涯にわたって続く慢性離人症もあります。

解離性同一性障害

いわゆる多重人格と呼ばれるものです。
これは「別の人格に入れ替わる」というものです。喋っていると急に別の人格が現れて喋り出したりします。(実際は演技っぽいものが多いと言われています。)

複数の人格が同一人物の中にコントロールされた状態で交代して現れ、日々の出来事や重要な個人情報、トラウマになった出来事(外傷的出来事)やストレスになる出来事など、通常なら容易に思い出せるはずの情報を思い出すことができなくなります。

急性解離反応

急にストレスを浴びてわけがわからない状態となり、2、3日すると元に戻るというものです。
上記の症状が急に起きたり、「狐が憑いた」「悪魔が乗り移った」とトランス状態になったりすることもあります。


こういった症状のように、何か強いストレスがあった時に、それを避けようとして、意識的な部分を自分の頭から分断しようと本能的に反応した結果、知覚や記憶が自分の意識から離れてしまうという状態が「解離」状態なのです。





解離性障害の症状6つ一覧





解離性障害の原因

解離性障害の原因

 具体的には各疾患に関して、どのようなメカニズムで発症しているのでしょうか。

解離性健忘

災害、事故、暴行やパートナーの不倫、離婚など、恐怖体験をしたときに強いストレスがかかり、自己防衛反応として、感情や記憶を切り離して思い出せなくするために、「記憶喪失」という症状となって現れるものと考えられています。

解離性遁走(かいりせいとんそう)

解離性遁走の発症を促進する要因として、重度のアルコールの乱用が挙げられますが、重要な動機因子は、苦痛を感じる体験から一刻も早く逃れたいという本能的な欲望です。
気分障害やパーソナリティ障害の患者さんも、解離性遁走を起こす傾向を持ちます。

転換性障害

意識の中で「何らかの症状があることで、周囲の人から心配されたり世話を焼かれたりといった特別な配慮をしてもらえる」ことを知っていることで、身体に症状が現れることがあります。
その一方で、生物学的要因や神経心理学的要因が関係しているという報告も増えてきています。
脳の機能障害によって感覚障害が生じている可能性もあります。

離人症

ストレスに圧倒されて精神的に耐えられない状況が続くと、「これは自分のことではない」と考えて無意識のうちに脳が意識や感情を断ち切るため、現実感の喪失や浮遊感、感覚の鈍麻といった症状となって現れるものです。

解離性同一性障害

ストレスを受ける体験をした際に自己防衛反応として切り離した自分の感情や記憶が別の人格となって成長し、将来的に同じようにストレスのかかる状況に置かれたときに、身代わりとなって現れるものであると考えられています。

急性解離反応

同様に、強いストレスに圧倒された時に、正常な精神状態を保つことをやめようとすることで発症すると言われています。





解離性障害の原因6つ一覧








解離性障害になりやすい人

解離性障害になりやすい人4選

解離になりやすい人の特徴

  解離性障害はストレス反応のため、一般的にストレスに圧倒されやすい状況だと生じやすいと言われています。

①柔軟な考えができない:
柔軟な考えや、しなやかな思考をするのが苦手な人が解離性障害に陥りやすいと言われています。
特に知的障害や境界知能の方は、相手の立場に立って物事を考えたり、同じ問題に対してもやり方を変えて考えてみたりすることが苦手な特徴があります。

②白黒思考
物事の受け止め方の中でも、0か100かで物事を考える傾向のことを白黒思考といいます。
何か失敗をしたとき「もうおしまいだ」と考える人と、「改善点に気づくチャンスを得た」と思う人がいます。
このように、 同じ状況でも人によって物事の受け止め方は異なるものです。柔軟な捉え方ができない結果、一つの悪い出来事に対して多大なストレスを抱えてしまうことになります。

③小児〜10代
強いストレスにこれまでかかったことがないことが多く、ストレスの対処法に対する経験が不足しているというのも背景になり得ます。

④発達障害(ADHD)
ADHDの方は衝動性という側面を持つため、ある物事に対し強く圧倒される場合があったり、中々切り替えができないことが多いのも要因になります。


ADHDについての詳しい内容は以下の記事で説明しています。併せてお読みください。

ADHD(注意欠如・多動症)の特徴について




自分の症状がどんな病気に関連するか気になる方は、症状チェッカーで確認してみましょう。

症状チェッカー







解離性障害の治療法とは

解離性障害の治療法とは



 現在のところ、解離性障害への特効薬は存在しないと言われています。
 
一方で、治療の方向性としては、ストレスの圧倒された結果解離が出現するため、「ストレスに圧倒されないようにする」ことを目標とします。

具体的な治療法について見ていきましょう。

環境調整

現状の環境に対するストレスがあまりに大きい場合に検討します。
ストレスから離れるよう調整することでストレスを減らし、圧倒されにくくする方法です。
そのため、現実的な問題として環境を変えるのが困難な場合もあり、その際は別の方法を優先します。

ストレスマネジメント

様々な角度からストレスおよびそれに対する影響を減らします。
まず、十分な休養をとって生活リズムを整えます。
その次に認知行動療法により、考え方のくせを整え、再構成します。
リラックスやマインドフルネスを行い、ストレスを受け入れ、緊張からの悪循環を立ちます。

スキルトレーニング

特に発達障害やパーソナリティ障害を背景として発症している場合に有効となります。
例えば、強いストレスに対して「あえて一歩引く」など、自身の感情や衝動に対しての対処方法に関する技術を身につけます。
それを繰り返すことで、ストレスに圧倒されないことを防ぎます。

薬物療法

特にうつ病や不安障害などの精神疾患を背景として発症している場合に有効となります。
背景となる疾患に合わせて薬物療法を行います。
元となる精神疾患が緩和された結果、連動して発症している解離症状もよくなることが多いです。
元となる精神疾患が改善されても症状が残る場合は、他の対策も併用していくのが良いでしょう。




解離性障害の治療法とそれぞれの説明一覧表






解離性障害についてのまとめ

解離性障害についてのまとめ


 ここまでの記事の中で、特に重要なポイントをまとめていきましょう。

  • 解離性障害は、強いストレスに圧倒された結果、意識と知覚または記憶を分断させようとするストレス反応。
  • 主な症状として解離性健忘、解離性遁走、離人症、転換性障害、解離性同一性障害、急性解離反応などが挙げられる。
  • 柔軟な考えや、しなやかな思考をするのが苦手な人が解離性障害に陥りやすい。さらに、ストレスに対する経験が浅い小児や10代にも発症しやすい。
  • 対策として重要なのが、ストレスに圧倒されなくなること。環境調整や、ストレス対策の改善をしつつ、背景となる精神疾患があれば、その治療と並行して行なっていくことが必要。


治療を進めていくに際して、解離されている心の状態を医師が把握する必要があるため、安心できる治療環境を整えること、ご家族など周囲の人が病気について理解することで、主治医との信頼関係を持つことが大切になります。

解離性障害の患者さんは、自分の解離症状に気付いていないことが多くあります。
その結果、身に覚えがないトラブルに巻き込まれることもあるでしょう。
また、自分や他人に対して警戒し、社会生活から遠ざかろうとします。
この状態が続くと他の精神疾患を合併する恐れもあるため、ご家族や周囲の方のサポートが必要になります。

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