【精神科や心療内科に相談を】眠れない時のメンタルケアについて

監修者紹介
別府拓紀
大学病院、精神科病院、専属産業医などを経て現在精神科病院で地域の精神科医療に従事 精神保健指定医、精神科専門医、臨床精神神経薬理学専門医、老年精神医学会専門医、公認心理師、スポーツドクター
別府拓紀
大学病院、精神科病院、専属産業医などを経て現在精神科病院で地域の精神科医療に従事 精神保健指定医、精神科専門医、臨床精神神経薬理学専門医、老年精神医学会専門医、公認心理師、スポーツドクター

はじめに

眠れない夜が続き、日中の生活に支障をきたしていませんか? 現代社会では不眠症に悩む人が増えており、特に働く女性に多いと言われています。不眠症の原因は様々ですが、メンタル疾患やその他の疾患が関係している場合もあります。そこで本記事では、以下の内容を解説していきます。

● 不眠症の種類や原因・対策
● うつ病などのメンタル疾患の可能性
● その他の疾患の可能性

どのようなタイミングでどの診療科を受診すべきかについてもアドバイスしています。快適な睡眠を取り戻すために、ぜひ参考にしてみてください。



不眠症の種類と原因


現代社会を生きる多くの人にとって「夜眠れない」「寝つきが悪い」などは悩みの種の1 つでしょう。一般人口を対象とした疫学調査によると日本成人の21.4%が不眠を持つと訴えているデータがあります。また、別のデータでは成人の約10〜20%が不眠症の診断基準を満たすといわれています。

とくに、仕事が忙しい人は不眠症になるリスクが高いです。日本の労働環境は厳しく、長時間労働を強いられたり、休暇が取りにくかったりするため、ストレスを抱え込みやすい状況にあります。また、女性は出産や育児などのライフイベントを経験する中で、ホルモンバランスの変化や心身の疲労から、不眠症になりやすいと考えられています。

不眠症の種類

不眠症は症状の現れ方により、主に以下の4つに分類されます。

入眠障害:寝床に入ってから寝付けない、寝つくまでに時間がかかる
中途覚醒:夜中に目が覚めて、再び寝付けない
早朝覚醒:目覚まし時計よりも早く目が覚めてしまい、二度寝ができない
熟眠障害:眠りが浅く、睡眠の質が低い

また、症状が一時的なものか続いているものかによって、一時的不眠症と慢性不眠症にわけることができます。

一時的不眠症
ストレスフルなライフイベントや環境の変化などをきっかけに発症し、数日から数週間程度で自然に改善します。たとえば、仕事のプレッシャーや人間関係のトラブル、引っ越しや旅行などの環境変化が引き金となる場合が多いと考えられます。

慢性不眠症:3 ヶ月以上にわたって症状が継続し、日中の活動にも支障をきたします。慢性不眠症は、いくつかの要因が絡み合って発症すると考えられています。


不眠症の原因

不眠症の原因は、大きく分けて以下の3 つが挙げられます。

心理的要因
ストレス、不安などです。ストレスを感じている人は、交感神経が優位になりリラックスして眠りにつくのが難しくなります。また、将来への漠然とした不安や、自己肯定感の低さ、完璧主義な性格なども不眠症を引き起こす原因です。

解決策・対処法
・ストレスの原因を特定し、解決に向けて上司や同僚、家族と話し合う
・マインドフルネスなどのリラクゼーション技法を習得し、日常的に実践する
・メンタル疾患が疑われる場合は、早めに専門家(医師・カウンセラーなど)に相談する


生活習慣要因
不規則な睡眠スケジュール、カフェインや夜食の摂取、運動不足などです。特に、夜型の生活習慣や、スマートフォンの使用による睡眠時間の短縮は、体内時計のリズムを乱し不眠症のリスクを高めます。

解決策・対処法
・毎日同じ時間に就寝・起床して規則正しい生活リズムを心がける
・夕食は就寝の3 時間以上前にすませ、なるべく軽めの食事にする
・日中の適度な運動(ウォーキング、ストレッチなど)を習慣化する


環境要因
騒音、光、室温などが関与します。寝室環境が適切でないと、安眠を妨げる原因となります。たとえば、交通量の多い道路に面した部屋での騒音や、街灯の明かりの差し込み、空調の悪さなどは、睡眠の質を低下させるでしょう。

解決策・対処法
・遮音カーテンやイヤープラグを使用し、外部の騒音を遮断する
・自分の体型や睡眠姿勢に合った枕やマットレスを選ぶ
・寝具は定期的に洗濯・交換し、清潔に保つ


不眠症の種類と原因は様々なため、不眠についてしっかり原因を追求し包括的にできることから少しずつアプローチしていくことが大切です。






眠れないときに考えられる精神疾患


不眠症の原因として見過ごせないのが、精神疾患との関連性です。不眠が関わる精神疾患には、たとえば、以下の3 つが挙げられます。

● うつ病
● 不安障害
● 適応障害

それぞれ詳しく解説します。

うつ病

うつ病は気分の落ち込みや、興味・喜びの減退を主症状とします。うつ病患者さんの多くが不眠症状を訴えており、抑うつ気分や意欲の低下、集中力の低下などの症状を伴うため、単なる睡眠不足とは異なります。そして、単なる睡眠不足だけでなく、日中の活動にも支障をきたし生活の質の低下を招いてしまいます。

【関連記事】うつ病の症状とその特徴・治療について解説

不安障害

不安障害は過度な不安や心配が継続的に生じ、日常生活に支障をきたす状態です。不安障害の患者さんは、常に緊張感や不安感を抱えているため、リラックスして眠りにつくのが難しくなります。たとえば、就寝時に様々な心配事が頭をよぎり「眠れないのではないか」という不安から、かえって眠れなくなってしまうケースがあります。不眠が続けば日中の疲労感や不安感がさらに増し、悪循環に陥ってしまうのです。

適応障害

適応障害はストレスフルなイベントに対して生じる心身の不調です。仕事や人間関係のトラブルなどの強いストレスがきっかけとなり発症します。適応障害は一時的な状態である場合が多く、ストレスの原因源の対処や環境の改善により、比較的速やかに回復することが可能です。しかし、適切な対処を行わなければうつ病など他のメンタル疾患に発展するリスクがあるため、注意が必要です。

【関連記事】適応障害とうつ病の違いについて解説



眠れない場合は、うつ病、不安障害、適応障害など様々なメンタル疾患が潜んでいる可能性があります。メンタル疾患による不眠は、単なる睡眠習慣の乱れとは異なり根底にある心の問題への対処が必要不可欠です。眠れない状態が長く続く場合は、医師に相談してみるのがオススメです。オンライン診療ができるクリニックを利用するのもいいでしょう。

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精神疾患以外の要因で眠れない場合

精神疾患以外の要因が不眠症の原因となっているケースがあります。具体的には以下の3 つです。

● 生活習慣の乱れ
● 睡眠環境の悪さ
● 身体的な問題

それぞれ詳しく解説します。

生活習慣の乱れ

不規則な生活習慣は、不眠症の大きな原因です。具体的には以下の3つが挙げられます

不規則な睡眠スケジュール
体内時計のリズムを乱しメラトニンの分泌を抑制します。メラトニンは睡眠を促進するホルモンで、分泌が抑制されると寝付きが悪くなったり睡眠の質が低下したりします。

就寝前の食事や飲酒
中枢神経を刺激し覚醒度を高めてしまいます。夜遅くの食事や飲酒は深い眠りを妨げるだけでなく、胃腸への負担にもなります。

運動不足や過度な運動
運動不足は疲労感を感じにくくさせ、睡眠への欲求を低下させます。一方、就寝直前の過度な運動は覚醒度を高め、寝付きを悪くする原因となります。生活習慣の乱れは不眠症だけでなく肥満や生活習慣病のリスクも高めてしまいます。不眠症の改善には、規則正しい生活リズムを作り、睡眠に適した生活習慣を身につけることが大切です。

睡眠環境の悪さ

睡眠環境の悪さは不眠症の原因となります。具体的には以下の5つが挙げられます。

● 寝室の騒音(交通量の多い道路に面した部屋、隣人の生活音など)
● 光の問題(街灯や電子機器の明かりの差し込みなど)
● 室温の問題(エアコンの冷えすぎ、暖房の効きすぎなど)
● 湿度の問題(湿気の多い梅雨時期、乾燥しすぎる冬場など)
● 寝具の問題(合わない枕や布団、古くなったマットレスなど)

これらの環境要因を一つ一つチェックするのは大変なことかもしれませんが、快適な睡眠環境を整えることで不眠症の改善につながります。

身体的な問題

身体的な疾患や不調は、不眠症の原因となる場合があります。具体的には以下の6つが挙げられます。

● ムズムズ脚症候群(下肢静止不能症候群)
● 睡眠時無呼吸症候群などの呼吸器疾患
● 慢性疼痛(関節リウマチ、線維筋痛症など)
● 更年期障害
● 過活動膀胱や前立腺肥大などの泌尿器疾患
● 心臓病や高血圧などの循環器疾患

様々な身体的な問題が、不眠症状の原因になる場合があります。身体的な疾患が疑われる場合は、内科や婦人科など各科の専門医に相談し、適切な治療を受けることが大切です。

不眠症改善のための対策

不眠症を改善するためには、生活習慣を見直し良質な睡眠環境を整えることが大切です。以下に3 つのポイントを紹介します。

● 就寝前のリラックス:
就寝前に軽い運動やストレッチを取り入れると、スムーズに眠りにつきやすくなります。読書や音楽鑑賞などの静かな活動を取り入れるのもおすすめです。また、就寝時刻の3時間前からは、カフェインや刺激物の摂取を控えめにしアルコールも避けた方が良いでしょう。

● 睡眠環境の整備:
遮光カーテンや快適な寝具を用意し、寝室の照明や室温に気を配りましょう。体温の低下は深い眠りへの移行を促すため、寝室の温度は18~22°C程度に保つことが理想的です。また、寝具の選択も重要なポイントです。自分の体型や睡眠姿勢に合った枕や布団、体圧分散に優れたマットレスを使用すれば、睡眠の質を高めることにつながります。

● 医師が処方する睡眠剤の服用:
医師から処方される睡眠剤を使うのも一つの手です。不眠をしっかり特定改善するためにも、きちんと診察を受け、安易に市販の睡眠薬を使うのではなく、しっかり医師の診断を仰ぐことが大切です。

少しずつでよいので、自分に合うと思う方法を取り入れて実践してみてください。







まとめ:眠れない状態が続く場合は医師に相談しよう

不眠症は、現代人の多くが抱える悩みです。一時的な不眠であれば生活習慣の改善やリラックス法の実践で改善が期待できますが、長期間にわたる場合はメンタル疾患の可能性を視界に入れることが重要です。

本記事では以下の内容を解説してきました。
● 不眠症の種類や原因・対策
● うつ病などの精神疾患の可能性
● その他の疾患の可能性

不眠症は、放置しておくと心身の健康に大きな影響を及ぼします。眠れない状態が続く場合は、一度心療内科や精神科への受診を検討しましょう。

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参考文献:
健康づくりのための睡眠ガイド 2023 (案)
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001181265.pdf
睡眠障害 の 社会生 活 に及ぼす影響
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpm/47/9/47_KJ00004675970/_pdf
睡眠障害と メンタルヘルス
https://www.t-pec.co.jp/wp/wp-content/uploads/2011/04/pdf_cept_20110415_17.pdf
睡眠障害 内山真 日本大学医学部精神医学系精神医学分野
https://www.jstage.jst.go.jp/article/numa/71/6/71_396/_pdf
Morin, C. M., & Benca, R. (2012). Chronic insomnia. The Lancet, 379(9821), 1129-
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https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22265700/
International Classification of Sleep Disorders, 3rd ed. Darien, IL: American
Academy of Sleep Medicine.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25367475/
Morin, C. M., et al. (2015). Cognitive-behavioral therapy, singly and combined
with medication, for persistent insomnia: a randomized controlled trial. JAMA,
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https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19454639/

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