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心療内科と精神科の違いを解説:受診する判断ポイントは?
1.はじめに
「寝ても疲れが取れない」
「人間関係の悩んでいて気分が落ち込んでいる」
「腹痛と吐き気が止まらない」
「同じ確認作業を何回もしてしまう」
身体やこころにこのような症状が現れ不安に感じることも多いでしょう。
内科で検査をしても「異常なし」と診断され、結局原因が何か分からず放置してしまうこともあるかもしれません。
「一時的な症状だ」
「身体は健康と言われたから大丈夫」
などと放置するのではなく、そのような場合は心療内科、精神科を受診しましょう。
自分でも気が付かないうちにストレスで病気にかかっていたり、こころの病気になっているかもしれません。
また、心療内科と精神科どちらを受診するべきか分からず、結局どちらも受診していない、という方もいるかもしれません。
今回は、心療内科と精神科の違いを、治療方法やよくある相談内容等を含めて解説していきます。
2.心療内科と精神科の違いは?

心療内科と精神科どちらも共通している点は、「こころが原因の病気」であることです。
内科の中にも専門の領域があるのと同じく、「精神科」と「心療内科」のように、こころの病気にも専門分野が異なります。
精神科と心療内科の異なる点
大きく異なる点は、「ストレス」によって発症した身体の病気の治療であれば「心療内科」、「こころの病気そのもの」を治療する場合は「精神科」になります。
表1 心療内科と精神科の特徴の違い

具体的な症状、相談内容、治療方法の違い等については、後ほど詳しく説明します。
診療科選択のポイント
「精神科」を受診するべきなのか、「心療内科」を受診するべきなのか、判断が難しいと感じる場合があるかもしれません。
結論、「どのような症状(身体か心か)に一番困っているのか」「どのような症状を中心に治療を行いたいか」を軸に、精神科か心療内科を受診するのかが変わります。
身体に強く症状が出た場合は心療内科、こころの強い症状が出た場合は精神科を受診する、といった分け方になります。
とはいえ、心療内科と精神科もはっきりとした線引きがされているわけではなく、どちらの診療科でも治療可能な病気もあるため、こころが原因による心身に不調を感じたら、どちらを受診しても構いません。
結局どの症状の治療を行えば良いのか分からないという場合には、心療内科と精神科どちらも対応可能な医療機関を受診することをおすすめします。
担当医師がそれぞれの症状によって心療内科か精神科どちらを受診するべきなのか、指示をしてくれます。
心療内科、精神科へ受診するべきサインに関しては、以下の記事で詳しく解説しています。併せてお読みください。
精神科・心療内科へ行くべき症状とサインとは?受診するべき基準を解説!
3.心療内科への受診を検討する場合のポイント

心療内科の診療範囲と治療方法の特徴
①診療範囲
心身の不調、ストレスに関係する問題を診察します。
ストレスが原因で、こころと体に発症する病気を治療することが可能です。心身症、適応障害、睡眠障害等が挙げられます。
以下のような症状と、原因になりそうなストレスが考えられる場合は、心療内科の受診がおすすめです。
・胃痛、腹痛や頭痛
・動悸やめまいや喘息
・吐き気、下痢、血圧が高くなる
②治療方法
・薬物療法
心療内科の主な治療方法は薬物による治療です。
「抗不安薬」がよく治療で使われます。
うつ状態、適応障害、睡眠障害の改善によく使われる、いわゆる「精神安定剤」のことです。
また、睡眠障害治療には、「睡眠導入剤」、うつ病治療には意欲低下を改善する「抗うつ剤」を使用します。
治療開始からいきなり強い効果のある薬を処方したり、大量の薬を処方するということはありません。
少量で効果の小さいものから処方し、患者さんの症状の大きさや改善度合いによって、種類を変更したり量を増やすなど調整を行います。
・認知行動療法
認知行動療法とは、ものの捉え方や受け取り方にアプローチをかけ、ストレスによって凝り固まった考え方をほぐし、心を楽にする治療法です。
うつ病や不安障害、不眠症、摂食障害、統合失調症等に効果があると言われています。
基本的には、専門家との対話を通じて行いますが、一人でも行うことができます。
・カウンセリング
カウンセリングとは、専門知識を持つカウンセラーとの対話を通じて、相談者が今の困りごとを整理したり、自己理解や気づきを得れるよう、サポートしていきます。
相談者の話を遮ったり、否定したりするようなことは、カウンセラーは絶対にせず、受容・共感しながら話を進めます。
カウンセリングに関しては、以下の記事で詳しく解説しています。併せてお読みください。
心理カウンセリングって何するの?精神科と心理カウンセリングの違い、選び方のポイントまで徹底解説!

心療内科で相談される事例
心療内科を受診する患者さんの相談内容には、一例ではありますが、以下のようなものがあります。
・朝会社に行こうとすると、お腹が痛くなってしまう
・理由は分からないが、涙が止まらない
・息が苦しくなり動悸が止まらない
・内科や呼吸器内科等で検査をしたが、特に異常はなかった
・いくら寝ても疲労感が残る
・意欲が湧いて来ず、ベッドから動けないことが増えた
・眩しさを感じやすかったり、音に過剰に敏感になる
・人間関係等に悩んでおり、気分が最近ずっと落ち込んでいる
・電車に乗ると息が苦しくなる
・めまいやふらつきを感じるが、内科等で検査しても異常がなかった
よくある相談として、胸の奥に痛みを感じる、胃が痛い、動悸や息切れがする、といった身体の症状で内科を受診したが、「異常なし」と診断され心療内科を受診をした、といった方が多くいます。
このように、身体には異常がないと診断された場合、心療内科を受診することで心身の不調を治療することができます。

心療内科に関しては、以下の記事でも詳しく解説しています。併せてお読みください。
予約が空いていない!心療内科の現状と早く受診するためのポイントを解説
4.精神科への受診を検討する場合のポイント

精神科の診療範囲と治療方法の特徴
①診療範囲
心の病気そのものの治療を行います。
身体に出る症状を扱う心療内科とは異なり、心の症状・病気の治療を行います。
幻聴や幻覚等の精神症状、うつ病、統合失調症、パニック障害、PTSD、認知症、強迫性障害、発達障害等の検査を行うことができます。
以下のような症状がある場合は、精神科の受診をおすすめします。
・落ち込みやイライラが続く
・落ち着かないなどの気分症状
・急激に落ち込んだり、突然喜びを感じ高揚した気分になる
・眠れない、寝過ぎてしまう
・好きなことでもやる気が出ない
・人と接することが怖い
・些細なことが気になり何度も確認してしまう
・人に悪口を言われていると感じる
・特定のことに強いこだわりを持ってしまう
②治療方法
・薬物療法
心療内科と同じく、「抗不安剤」が治療で使われます。
不安や緊張を抑えるために、じっくりと治療を行う際に使われます。
抗うつ剤、睡眠導入剤の他にも、「抗精神病薬」も使用します。
抗精神病薬とは、統合失調症の治療する際に主に使われ、脳内のドーパミン神経を抑え、幻想、妄想、意欲が湧かない、興奮、焦燥等の症状を抑えることができます。*1)
抗精神病薬は、じっくりと効果が効く抗不安剤、安定剤とは異なり、急性症状に即効性があるのが特徴です。
心療内科と同様、治療開始からいきなり強い効果のある薬を処方したり、大量の薬を処方するということはありません。
患者さんの改善度合いによって、種類を変更したり量を増やすなど調整を行います。
・精神分析
人生で長く問題となっていることに関して、効果がある治療法です。
例えば、恋人関係、家族関係、夫婦関係、職場での悩み、子育て等です。
普段無意識に行っていること、感じていることを「意識してみる」ことが目的の治療です。*2)
具体的には、セラピストに普段繰り返してしまう悩みや失敗、不安等を話しながら、自分でも気が付かなかった「欲求」「不安」「理想」等を意識するようになります。
・電気けいれん療法
この療法は薬物療法や心理療法等で効果が見られず、重症の病気の治療が必要な際に行います。主に重度のうつ病や統合失調症、双極性障害の治療時に行うことが多いです。*3)
患者が麻酔で寝ている短時間に、短い電流を脳に流し、けいれんを起こします。
電気けいれん療法によって、不具合が起きている脳の調整機能に刺激を与え、神経伝達物質を放出させ、調整機能を改善させます。
・認知行動療法

精神科で相談される事例
精神科を受診する患者さんの相談内容には、一例ではありますが、以下のようなものがあります。
・人前に出ると過度に緊張してしまう
・常に誰かに跡を付けられていると感じる
・常に周りが自分を見ていて、悪口を言われていると感じる
・小さいことにこだわりすぎてしまい、何度も同じ確認作業をしてしまう
・物忘れが増えたと感じる
・特に悪いことはしていないのに、常に誰かに迷惑をかけていると感じる
・食欲を感じず、食べても美味しいと感じない
・幼少期から落ち着きがなく、大人になっても落ち着かない
・心細さを感じやすい
・布団に入っても寝付けない
・アルコール等依存が強くなった
精神科の初診に関しては、以下の記事でも詳しく解説しています。
併せてお読みください。
精神科の初診が不安な人必見!初診の内容、流れ、医師に伝える際のポイントなどについて解説

参考文献
*1)”かかりつけ医のためのBPSDに対応する向精神薬ガイドライン(第2版)”, 厚生労働省,https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000140619.pdf, (2024-2-21)
*2)”精神分析とは”,日本精神分析協会,https://www.jpas.jp/, (2024-2-21)
*3)”電気けいれん療法(ECT)推奨事項 改訂版”,精神神経学雑誌,https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1150060586.pdf, (2024-2-21)
5. 心療内科と精神科の違い:まとめ

「どちらの症状も当てはまるな」というような場合は、精神科と心療内科どちらも行っている医療機関の受診をおすすめします。
また、ストレスの原因をご自身で把握している場合心療内科、こころの症状を強くご自身で感じる場合は精神科の受診がおすすめです。
病院の予約をする際に、「このような症状で困っているのですが...」と相談してみることで、心療内科・精神科どちらを受診した方がいいのか指示をしてくれるはずです。
心身に不調を感じるが、自分の症状がどんな病気に関連するか分からない...という方は、症状チェッカーで確認してみましょう。
症状から当てはまる心の病気を調べることができます。