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情緒不安定は病気?症状、原因、対処法についてわかりやすく解説
情緒不安定とは
情緒不安定とは、気分や感情の起伏が激しい状態をあらわします。
気分の波や感情の起伏は、誰にでもあることですが、情緒不安定は病気の症状としてあらわれることもあるため、日常生活に支障を来したり、学業や仕事に影響が及んだりする場合には注意が必要です。
ここでは情緒不安定の症状や原因、対処法について解説します。
情緒不安定の症状
情緒不安定なときにみられる症状は人それぞれですが、よくあるのは以下の症状です。
・些細なことでイライラして怒りっぽくなる
・理由もなく悲しくなって涙が出る
・ネガティブな感情に振り回される
・ちょっとしたストレスや刺激に敏感になる
・元気なときと落ち込んでいる状態の差が激しい
他にも以下の症状がみられることがあります。
・食欲の増加または減少
・仕事に集中できない
・気力が湧かない
・眠れない
・朝起きられない

情緒不安定の原因

情緒不安定の主な原因として、ストレス、睡眠不足、生活習慣の乱れ、カフェインやアルコール、ホルモンバランスの乱れ、自律神経失調症、精神疾患などが挙げられます。
①ストレス
精神的なストレスが長期に渡ると、交感神経が過剰に興奮し、その結果、緊張状態が続いたり、イライラしやすくなったりします。
それと同時に副交感神経が抑制されることで、睡眠の質の低下や消化不良が生じ、心身の不調の原因となります。
このように、長期的なストレスを受けると、自律神経のバランスが崩れて情緒不安定になることがあります。
②睡眠不足
不眠の人がうつ病になるリスクは健康な人の2 倍以上と言われており、睡眠不足は心身の不調を引き起こします。
睡眠は以下のような、心身の健康を保つための重要な機能を担っています。
・疲労回復
・免疫力の維持・向上
・集中力や作業効率の向上・維持
・記憶の定着・整理
これらの機能が低下したり損なわれたりすると、体調不良や仕事に支障を来たし、ストレスが生じて情緒不安定になることがあります。
不眠症に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。併せてお読みください。
③生活習慣の乱れ
生活習慣の乱れは、規則正しい生活を送ることを求められる職場や学校に適応できなくなるなど、社会生活に支障を来します。
生活習慣が乱れて、朝日を浴びず、夜間に強い光を浴びる生活をしていると、体内時計が乱れ、睡眠覚醒リズムが崩れて不眠の原因になります。
不眠による睡眠不足は、1. で解説した通り、心身に重大な悪影響を与えます。
このように、生活習慣の乱れは、社会生活への不適合や心身の健康の損失の原因となり、情緒不安定を引き起こします。
④アルコール、カフェイン
「寝酒」という言葉があるように、寝付けないときにアルコールを飲むと眠れるという方がいますが、アルコールを摂取すると睡眠は浅くなり、睡眠の質が下がってしまいます。
また、寝酒を続けていると入眠作用は次第に得られなくなり、アルコール摂取量が増えてしまうこともあります。
加えて、アルコールの利尿作用によってトイレに行くために中途覚醒してしまうことも睡眠の質を下げる原因になります。
コーヒーやエナジードリンクに含まれるカフェインも、睡眠や自律神経のバランスに悪影響を与えることが知られています。
⑤自律神経失調症
自律神経失調症は、自律神経である交感神経と副交感神経のバランスが崩れている状態を指します。
症状は様々で、身体症状としては、頭痛や不眠、冷え、便秘などがありますが、精神症状の一つに情緒不安定があります。
自律神経失調症の原因は、更年期障害によるホルモンバランスの乱れ、ストレスや不規則な生活による長期的な自律神経の興奮などが挙げられます。
⑥ホルモンバランス
月経前症候群(PMS)/ 月経前不快気分障害(PMDD)
女性の場合、月経周期によるホルモンバランスの変化が感情や気分に影響します。
月経が始まる3~10 日前に気分の落ち込みや自律神経失調症状、腹痛や頭痛などの症状を訴える人が多く、このような月経前の心身の不調は、月経前症候群(PMS)として知られています。
症状の有無や程度、どのような症状を強く感じるかには個人差があり、精神的な症状が強い人や体の調子が著変する人、心身ともに特に変化がなく元気に過ごせる人など様々です。
特に気分の落ち込みといった精神的な症状が強いケースは、月経前不快気分障害(PMDD)と診断されます。
PMS やPMDD は低用量ピルや漢方薬などで治療することができます。
月経前症候群(PMS)/ 月経前不快気分障害(PMDD)については下記の記事で詳しく解説しています。併せてお読みください。
生理前の気分の落ち込みの対処法とは?月経前気分障害(PMDD)の症状と治療
更年期障害
他にも女性特有の状態として、更年期障害があります。
閉経前後の約5 年間を指す更年期は、女性ホルモンが急激に減少する期間として知られており、このようなホルモンバランスの変化によって自律神経のコントロールが困難になると言われています。
そのため、自律神経失調症と同様に情緒不安定を来すことがあります。
更年期障害に対しても、ホルモン補充療法や漢方薬などの薬物療法があります。
甲状腺疾患
甲状腺ホルモンは代謝や活動性に関係しています。
そのため、バセドウ病をはじめとする甲状腺機能が亢進する疾患では甲状腺ホルモンが過剰になり、落ち着きがない、イライラしやすい、集中力の低下、神経過敏、疲れやすいなどの精神的な症状を生じることが知られています。
一方で、橋本病などの甲状腺機能が低下する疾患では、甲状腺ホルモンが低下することでうつ症状を呈することがあります。
⑦精神疾患
情緒不安定は、様々な精神疾患の症状としてあらわれることがあります。
疑われる精神疾患としては、適応障害やうつ、双極性障害、統合失調症、境界性パーソナリティー障害、不安症などが挙げられます。
自分の症状がどんな病気に関連するか気になる方は、症状チェッカーで確認してみましょう。

情緒不安定の対処法

①セルフモニタリング
まずは、セルフモニタリングで自分の状況や行動パターンを把握することが肝要です。
自分の状況を一番把握できるのは自分自身です。知識のあるカウンセラーや病院の先生も会って話す頻度はせいぜい週1 回程度ですし、長い時間一緒にいる家族や友人もこころのうちまでは知ることができません。
自分が気づいていない癖や無意識のうちに行っていることを知るために、周囲の人に話を聞いてみることは有用な場合もありますが、それには限界があります。
セルフモニタリングって言われてもそもそも何についてモニタリングすればいいの?という方は、以下の観点からご自身の生活を振り返ってみると良いかもしれません。
紙に書き出す、カレンダーに印をつけるなどして記録をつけておくとパターンが見えやすくなったり、整理できたり、人に伝えやすくなったりします。
・どのような状況でストレスを感じてどのような精神状態になるのか、それにはパターンがあるのか
・日常的に強いストレスを感じていないか
・睡眠は十分に取れているか
・生活リズムは整っているか(起床時間、睡眠時間、食事の時間、毎日朝日を浴びて睡眠前に強い光を浴びていないかなど)
・アルコールやカフェインの摂取量が過剰になっていないか
・女性の場合:生理周期と気分の波が関係しているか、症状があらわれたのは更年期が始まってからか
セルフモニタリングを行うメリットは大きく分けて以下の3 つが挙げられます。
① 原因の特定に役立つ
② 解決方法を考えるのに役立つ
③ 相談内容が明確になり、サポートが得られやすくなる
セルフモニタリングをして自分自身の状況がわかると、何が原因なのか当たりをつけることができるでしょう。
そうすれば、その原因に対して解決策を考えることができます。
ただ、自分で考えた解決方法で解決できない場合や自分ひとりでは解決できないこともあるはずです。
そのような場合は周囲の身近な人や医師・カウンセラーなどの専門家に相談して助けを求めたり、仕事を減らしてほしいといった具体的な要望を伝えたりすることになるでしょう。
相談や具体的なお願いをする際にも、自身の状況や困っていることを明確に伝えることができると、より的確なアドバイスがもらえたり、理解が得られて要望を受け入れてもらえたりする可能性が高くなります。
②認知行動療法
認知行動療法では、認知(=物事の捉え方)が行動や感情に先立つことに着目し、極端な認知(認知のゆがみ)を修正して柔軟な捉え方ができるように促すことで、適切な行動が取れるようにしたり、ネガティブな感情を軽減したりします。
カウンセラーや医師と面談を重ねて行われます。
③マインドフルネス
マインドフルネスでは、今その瞬間に経験していることだけに注意を向けます。
これを継続することで、過去の失敗や未来への不安、他人からの評価など、頭に浮かんでしまう雑念を鎮めて、今この瞬間だけに集中できるようになると言われています。
8 週間続けると、扁偏桃体の反応が抑制され、海馬と前頭前野が活性化し、ストレスの軽減、パフォーマンスの向上などの効果があるとする研究があります。
④自律神経を整える
睡眠を十分にとると疲労やストレスが軽減され、生活リズムも整い、自律神経のバランスを改善することができます。
適切な睡眠時間は一般的に年齢が上がるにつれて短くなることが知られていますが、20~60 代の働く世代は6~9 時間の睡眠が理想的とされています。
カフェインの摂取を控えることも十分な睡眠の確保には重要です。
カフェインを取る習慣がある人はない人よりも不眠を訴える割合が高く、入眠潜時(寝付くまでに要する時間)が長く、睡眠効率(床上時間のうち就寝時間の占める割合)が低い傾向にあります。
健康に影響を与えないカフェインの量は、健康な成人の場合、1 日当たり400㎎(コーヒー2~3 杯分程度)と言われています。
カフェインの摂取量を見直し、睡眠に影響が出にくいように取る場合は夕方より前にすると良いでしょう。
ヨガやストレッチは副交感神経を高めることで自律神経のバランスを整える効果があると言われています。
他にもストレスの指標であるコルチゾールを低下させる効果があることも知られています。

情緒不安定は病気? まとめ

情緒不安定とは
情緒不安定とは気分や感情の起伏が激しい状態をあらわします。
情緒不安定の症状
個人差がありますが、些細なことでイライラして怒りっぽい、理由もなく悲しくなって涙が出るなどがあります。
情緒不安定の主な原因
ストレス、睡眠不足、生活習慣の乱れ、カフェインやアルコール、ホルモンバランスの乱れ、自律神経失調症、精神疾患が挙げられます。
情緒不安定の対処法
まずはセルフモニタリングで自分の状況を把握し、原因にアプローチして解決を試みたり、周囲の人や医師・カウンセラーなどの専門家に相談したりしてみると良いでしょう。
カウンセリングなどよく行われるのは、認知行動療法です。
マインドフルネスや自律神経を整えることは、自宅でもできる対処法です。
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