ワーキングケアラーとは?働きながら介護する人が抱える負担
「仕事と介護で、自分の時間がまったくない」
「同じ状況の人が周りにいなくて、話せる相手がいない」
「これがいつまで続くのか、考えると不安になる」
働きながら家族の介護をしていると、こうした思いを抱えたまま、誰にも言えずに日々をこなしている方が少なくありません。じつは、そういう人には「ワーキングケアラー」という名前があり、全国に数百万人の規模で存在しています。
この記事では、ワーキングケアラーとは何か、働きながらの介護でどんな負担が起きやすいのか、そしてなぜ深刻化しやすいのかを整理します。名前と構造を知ることは、「自分だけではなかった」と気づく入口になります。
この記事でわかることは、次のとおりです。
- ワーキングケアラーの定義と、どのくらいいるのか
- 働きながらの介護で起きやすいこと(時間・お金・心身)
- 負担が深刻化しやすい理由
- 一人で抱えないための相談先の入口
ワーキングケアラーとは——働きながら介護する人のこと
ワーキングケアラーとは、仕事をしながら家族などの介護をしている人を指す言葉です。総務省の「令和4年就業構造基本調査」(2022年)によると、介護をしている人は全国に約629万人おり、そのうち働きながら介護をしている人は約365万人にのぼります。働いている介護者のほうが多い、というのが実態です。
中心となるのは40〜50代ですが、20〜30代で親や祖父母の介護を担う人もいます。同居して毎日介護をしている人だけでなく、離れて暮らす親のもとへ週末ごとに通う遠距離介護や、きょうだいで分担しながら関わっている人も、ワーキングケアラーに含まれます。
つまり、特別な一部の人の話ではありません。親の年齢を考えれば、働く人の誰にでも起こりうる状況です。それにもかかわらず、当事者になるまでこの言葉を知らなかったという人が大半で、「自分の状況に名前がある」と知ること自体が、支援につながる第一歩になっています。
働きながらの介護で起きやすいこと
仕事と介護の両立では、負担が大きく3つの面にあらわれます。
- 時間の負担 —— 通院の同行やケアマネジャーとの連絡は平日の日中に入りがちで、有給休暇が介護のために消えていきます。仕事・介護・家事を回すと、最後に削られるのは自分の休息の時間です
- お金の負担 —— 介護サービスの利用料、通いのための交通費、生活の補助にかかる出費。勤務時間を減らせば、収入そのものにも影響します
- 心身の負担 —— 夜間の見守りやコール対応で睡眠が細切れになる、常に気を張っている、気分が沈む。体と心の両方に疲れが積み重なります
この3つは別々ではなく、連鎖します。時間が足りないから睡眠を削る、収入が心配だから仕事を減らせない、疲れているのに休めない——どれか1つの負担が、他の2つを重くしていく構造があります。
負担が深刻化しやすい理由
介護と仕事の両立の負担は、放っておくと深刻化しやすいことが知られています。背景には、次のような事情があります。
- 終わりの見通しが立ちにくい —— 子育てと違い、いつまで続くか分からないまま走り続けることになります
- 職場に言いにくい —— 介護は「家庭の事情」と受け取られやすく、評価への影響を心配して抱え込む人が多くいます
- 自分を後回しにしやすい —— 責任感が強く、がんばれてしまう人ほど、自分の休息や体調管理があとまわしになります
- 相談先が分散している —— 介護のこと、仕事のこと、お金のこと、自分の体調のことで窓口が分かれており、疲れているときに調べる余力がありません
診察をしていると、介護をされている方は「まだ大丈夫」とおっしゃりながら、すでにかなり疲弊されているケースが多い印象があります。終わりが見えない負担は、ご本人が気づかないうちに心身をすり減らします。深刻になってからではなく、「大変になってきたな」の段階で誰かに話すことが、両立を続けるうえでいちばんの備えになります。
一人で抱えないための相談先の入口
負担を一人で抱え続けないために、相談先の入口だけでも知っておくと、いざというとき動きやすくなります。
- 介護のやり方・サービスのこと —— 地域包括支援センター(市区町村ごとにある高齢者の総合相談窓口)
- 仕事との両立のこと —— 職場の上司・人事。介護休業や介護休暇など、両立を支える制度が法律で定められています(内容の詳細は勤務先に確認を)
- 自分の心身のこと —— 医療機関。眠れない・気分の落ち込みが続くときは、精神科・心療内科も相談先になります
- 気持ちのつらさが強いとき —— 厚生労働省「まもろうよ こころ」に、電話やSNSですぐ相談できる公的窓口がまとまっています
全部を一度に整える必要はありません。いまいちばん困っていることの窓口を、1つ選ぶところから始めれば十分です。
受診はオンラインでもできます
エニキュアでは、初診からオンラインで精神科・心療内科に相談できます。朝8時〜夜24時まで、土日も診療しているため、仕事の前後や、介護が落ち着いた夜の時間にも相談しやすい体制です。
受診前には事前の問診票があります。選ぶだけの形式なので、うまく説明できるか不安でも、診察では医師が必要なことを質問しながら確認していきます。
診察では、介護疲れによる不眠や気分の落ち込みだけでなく、仕事との両立のしんどさや、必要に応じた診断書についても相談できます。医師が処方した薬は、配送に対応できる場合があります。
なお、心理検査や一部のお薬など、オンラインでは対応できないものもあります。その場合は、診察のなかで医師が必要な選択肢をご案内します。
「介護の相談で受診していいのか」と迷われる方がいますが、介護をしているご自身の眠りや気分の変化は、それ自体が診察の対象です。ご家族の状況を含めてお話を伺い、生活を続けながらできるケアを一緒に考えていきます。オンラインなら移動が要らないぶん、介護中の方でも続けやすい方法だと感じています。
よくある質問
Q1. 自分はワーキングケアラーに当てはまりますか?
同居していなくても、毎日でなくても、仕事をしながら家族の介護や世話に関わっていれば、ワーキングケアラーに当てはまると考えて構いません。買い物や通院の付き添い、金銭管理、離れて暮らす親の見守りなども介護の一部です。「介護と呼ぶほどではない」と感じている段階の負担も、積み重なれば心身に影響します。
Q2. 介護をつらいと感じるのは、甘えでしょうか?
甘えではありません。介護は、時間・お金・心身の負担が同時にかかる、それ自体が大変な営みです。大切な家族であることと、負担がつらいことは両立します。つらさを感じるのは、それだけの負荷がかかっているというサインであって、あなたの気持ちの弱さの問題ではありません。
Q3. まず何から始めればいいですか?
介護の体制で困っているなら、地域包括支援センターに連絡することが最初の一歩になります。ご自身の眠れなさや気分の落ち込みが続いているなら、医療機関への相談を先にしても構いません。全部を一度に整える必要はなく、いまいちばん困っていることの窓口を1つ選べば十分です。
まとめ
ワーキングケアラーについて、あらためて整理します。
- ワーキングケアラーは働きながら介護をする人のことで、全国に約365万人。誰にでも起こりうる状況
- 負担は時間・お金・心身の3つの面にあらわれ、互いに連鎖して重くなりやすい
- 終わりの見えなさ・言いにくさ・自分の後回しが、深刻化の背景にある
- 相談先の入口を知っておくことが、抱え込まないための備えになる
介護と仕事を両立している時点で、あなたはすでに多くのことを担っています。心身の疲れを感じ始めたら、それは相談を始めていいサインです。
なお、いま気持ちのつらさが強く、一人で抱えるのが難しいときは、厚生労働省の「まもろうよ こころ」で電話やSNSの相談窓口が案内されています。緊急のときは、こうした窓口も頼ってください。
参考URL
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診断・治療に代わるものではありません。体調や治療に関する判断は、必ず医師にご相談ください。
運営: エニキュア|オンライン精神科・心療内科