休職した方がいいサインとは?

監修者紹介
別府拓紀
大学病院、精神科病院、専属産業医などを経て現在精神科病院で地域の精神科医療に従事
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別府拓紀
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休職の制度について


 休職という制度は、一般的には企業に雇用されている従業員が、自己都合によって取得する長期休暇のことを指します。
このとき従業員は、企業とのあいだに締結された雇用契約はあるものの、働くことを免除されます。
休業や欠勤と似ていますが、休む理由や取得期間、事前申請の有無などに違いがあるのです。


休業、欠勤との違い

 休職は従業員の自己都合による休暇であるのに対し、休業は会社の都合、あるいは制度により発生する休みです。
例えば、企業の業績不振や設備の不具合によって働くことができず、従業員が休みになった場合は、休業に該当します。

また、育児休業や介護休業においても、法律にもとづいた制度による休みなので、休職ではなく休業なのです。
欠勤は、従業員が自己都合で休むことに変わりはないのですが、休みの期間や事前申請の有無といった違いがあります。

従業員が無断で休んだ場合や、突発的な体調不良により数日間休んだ場合は欠勤とみなされますが、事前に企業との話し合いを行い、相談結果に応じて長期的に休むものを休職といいます。


休職の期間に期限はある?

 従業員が休職できる期間の上限は、原則として企業の規則である就業規則に定められています。休職制度は、法律で定められた制度ではないため、職場によって取り決めは様々です。

一般的には従業員の症状の度合いによって療養期間が異なります。症状が軽度の場合は1ヶ月~2 ヶ月、重度の場合は3ヶ月〜半年またはそれ以上の休職期間を設けることが多いです。

休職を申し出る労働者は、一人ひとり事情が違うため、診断書や面談による判断が必要となります。
いつから休職開始となるかに関しては従業員と企業とが相談して決めることになりますが、健康上の理由で就業が困難と判断される場合はその日から休職扱いになることもあります。

休職中の給料はどうなる?

 休職は一般的に企業からの給料は出ず、傷病休職の場合、共済組合や健康保険組合から傷病手当金を受け取れる場合があります。
傷病手当金は病気や怪我で働けなくなったときに本人とその家族が手当金を公共機関から受け取ることができる制度です。

病気にはもちろん、うつ病や適応障害といった精神疾患も含まれます。
健康保険による傷病手当金は休職4日目から受給することができます。

傷病手当金は労務不能であることを自己申告するだけでは受け取れません。
通院して治療に専念しているかどうか、また主治医がどのような意見を持っているかなどを考慮し、健康保険組合や共済組合が支給できるかどうかを判断します。

一つの傷病名や疾患名に対して原則 1年6カ月の間、傷病手当金が支給されます。
金額は標準保険月額から算定されますが、およそ1カ月分の給与の2/3だと言われています。



傷病手当金の受給には、以下の条件が必要です。

・健康保険に加入していること

勤務先企業の健康保険に加入している必要があります。

・業務外のケガや病気により働けないこと

休職の理由が仕事や通勤によるものではないことが必要です。業務内のケガや病気で働けない場合は、労災保険の対象となります。

・給与の支払いがないこと

給与の支払いがないことが必要です。



傷病手当金の申請方法

 企業が傷病手当金を申請する際は、「健康保険 傷病手当金 支給申請書」を作成して協会けんぽまたは企業の健康保険組合に提出します。

従業員と企業の双方に記入する欄があるので、従業員が必要事項を記入したのちに、労務担当者が手続きを行います。
傷病手当金申請時は、医師の意見書などの添付書類が必要です。

労務担当者は、自社が加入している協会けんぽまたは健康保険組合のウェブサイトなどを確認するようにしてください。






休職制度とは?についてのまとめ





精神的な理由で休職するとき

精神的な理由で休職するとき

 職場の人間関係や労働環境にストレスが溜まり、精神的に抑うつ状態になりつつあることを自覚したら、一度そのストレス源から離れてあげる必要があります。
そのために、休職を検討するのも一つです。

休職の流れ

①精神科に受診する
 まず精神科で自分の症状を伝え、診断してもらい薬をもらいます。
そして精神科を受診したことを上司などにあらかじめ伝えるようにしましょう。
突然診断書を持ってくよりは、自分がすでに病院に通っているということを事前に知ってもらうことが大事です。


②休職したい旨を主治医に説明する
 初診で急に休職する流れになることは稀なケースです。
処方された薬を飲みつつ、それでも改善されなかったら、主治医と相談しつつ休職したい旨を伝えましょう。
そして主治医から診断書をもらいましょう。


③休職の開始
 上司や人事部に診断書を提出し、速やかに休職を開始しましょう。
休職のあいだは負い目や焦りなどを感じず、ただただ自分の好きなように生活しましょう。
復帰の際に不安があるなら何かスキルを磨くのでも良いし、ダラダラ過ごすのも良いでしょう。


④定期的な面接
 休職中は少なくとも月一回程度主治医に受診し、また企業の人事部などとも月に一回程度、状態の報告を行い、今度の流れや傷病手当金の受給について相談するとよいでしょう。


⑤復職
 主治医と相談し、職場に復帰できると判断できたら復職の準備を行います。
企業によってはならし勤務という時短勤務から復帰する制度がある場合もありますが、多くの場合フルタイムでの現場復帰が原則となる場合が多いでしょう。

場合によっては職場配置の転換や転勤といった措置をとる企業もあり、よく相談することが大事ですります。
主治医がは患者の症状が仕事に戻っても問題ない状態まで改善していると判断した場合は復職の診断書を作成します。
それを元に企業によっては産業医が復職の可否について判断し、問題なければ復帰となります。また症状によっては休職の期間が延長されることもあります。

精神科に通うには抵抗があるかもしれませんが、今や精神疾患は 5 大疾病に数えられるほどありふれた疾患であり、だれもがかかる可能性があります。

そのため、心配する必要はなく、早めの受診をお勧めします。
また、一度復職してからも、症状の悪化を招くことがよくあるので、しばらくは通院を続けるようにしましょう。





休職から復職の流れについての表



休職を考えるサイン

休職を考えるサイン6つ

 休職を考える際、どれくらい症状が重いと休職した方がいいのでしょうか?

休職を考える際のポイント

本人の意思

 本人が実際に休みたいと思うか、というのは大事な指標です。
精神状態は本人にしかわからないため、自分が「休みたい」と思うのなら休むことが大事です。
ただ、本人の判断能力が低下するぐらい抑うつ状態がひどい場合は、本人の意思のみならず客観的な判断が重要です。


周囲の意見

 家族や職場の周りの人から「休んだ方がいい」と言われるときは、自分はまだ働けると思っていても正常な判断でない可能性があります。
一度自分を見つめなおし、休職の休む判断をした方が良いです。自分で判断できない場合は、病院へ家族や職場の人と一緒に受診し医師の診察を受けましょう。


仕事ができているか

 出勤していても三、四時間ぼーっとしているだけ、のような場合、このまま勤務を続けるよりは一度休息を取るのが本人と職場環境のお互いにとってメリットになることが多いです。本人は頑張って出勤したとしても、結局仕事がうまくいかない場合もあります。


食事・睡眠

 十分な食事、睡眠が取れているか、も大事な指標です。いつもより痩せてきたことに気づいたら、注意しましょう。


動悸や涙

 職場に行くたびに動悸や頭痛、涙が自然に出てくるなどの状態であれば、身体が悲鳴をあげている状態のため、休みを取るのが良いでしょう。
死にたい、とふと思うようになる時も非常に注意です。


過労死の基準

 ここ半年の残業時間が80時間、または直近の残業時間が100時間を超えている場合などは、過労死の危険が非常に高いため、休職を検討するべきです。

精神疾患の状態では、正常な判断が行えないことが多いため、無理をせず早めに休息をとることは重要です。


自分の症状がどんな病気に関連するか気になる方は、症状チェッカーで確認してみましょう。

症状チェッカー



休職を考えるサイン一覧





休職から復職後に気をつけたいこと

休職から復職後に気をつけたいこと5選

復職明けに気を付けるべきのポイント

最初の一週間

 復職してからの一週間は、周りとの温度感の差やパフォーマンスの差で、劣等感や不安を抱いてしまうかもしれません。
しかし一週間もたてば次第に慣れていき不安は消え去っていくと言われています。


パフォーマンス

 復職後は周りより仕事のパフォーマンスが低いことはツキモノです。
「自分は足を引っ張っている存在なのではないか」と罪悪感や焦燥感で、不安になるかもしれませんが、復帰して早々元の仕事量がこなせるはずは基本的にありません。
焦らず自分のペースで徐々に復帰していくことが大事です。


通院を継続する

 再発を防ぐために、復職してからもしばらくは定期的に受診を続けることが大切です。


ワークライフバランス

 過度な労働や仕事のプレッシャーから適切なワークライフバランスを保つように努めましょう。
特に休職前と全く同じ環境に戻れば、最初の可能性が高くなるので、労働環境に問題がないかチェックしましょう。


職場への調整

 職場復帰の際に、必要な調整や支援を雇用主や人事部門と話し合いましょう。
復職は基本的に原則現場フルタイム復帰が原則となることが多いですが、場合によっては柔軟な労働時間やタスクの調整など現在の状態を考慮してもらえる場合があるかもしれません。






復職後の気をつけたいこと5つ一覧






休職についてのまとめ

休職についてのまとめ


 ここまでの記事で、特に重要なポイントをまとめていきます。

・休職とは、欠勤や休業と違い、事前に企業との話し合いを行い、相談結果に応じて長期的に休むことを指す

・休職の期間は一般的には1〜3ヶ月間と言われ、その間の給料は出ないが、医師からの診断書を提出して申請することで給料の約三分の二の「傷病手当金」を受給することができる

・休職の意思が決まったら、上司や人事部に診断書を提出し、速やかに休職を開始する。休職のあいだは負い目や焦りなどを感じず、自分の好きなように生活するのが大事

・自分が大丈夫だと思っていても、家族や職場の人間が休職を進めるときは、精神的に追い詰められている状態であることが多いので、休職を検討するべき



人間関係の悩みや、労働などによる精神的なストレスから抑うつ状態になることを「適応障害」と呼び、放置すれば取返しの付かないことになる可能性もあります。

心の病は放っておけばどんどん悪化していくため、身体や心に強い症状が出る前に、早めに仕事やストレスの原因から離れて、心と身体を休めることが大事です。

仕事を休んだり、人間関係から離れたりすることは、本人の権利です。また自分の心と身体の健康を守るのは、自分自身しかいません。
疲れた心と身体を療養し、健康を取り戻すための手段として、休職を考えるのも大切な判断でしょう。

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