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精神科の診断書とは?もらい方や費用、支援と手当について解説
- そもそも精神科の診断書とは?発行にかかる時間も解説
- 精神科の診断書が必要となるケース・タイミング
- 精神疾患の診断書を発行するメリット・デメリット
- 精神疾患の診断書で受けられる社会的支援と手当
- 精神疾患の診断書についてよくあるQ&A
- 精神科の診断書 まとめ
皆さんは、風邪をひいて仕事や学校を休むことになった際に、医師による診断書の提出を求められたことがあるでしょうか。
診断書は、医師が患者の病名や症状を記載した書類であり、患者が実際にその病気にかかっているということを証明する一つの手段です。
実は、この診断書は精神疾患に悩む患者さんにとっても非常に重要な書類となります。
診断書には患者健康状態が医師によって公式に記録され、さまざまなサポートや手当を受けるための証拠となるのです。
しかし、多くの方々は、この診断書には何が書かれていてどのように利用するのか、またそれにかかる費用はどれくらいなのかについて明確に理解していないというのが現状ではないでしょうか。
さらに、うつ病を始めとする精神疾患の診断書を取得するプロセスは一般的な診断書とは異なる場合があり、それに伴って得ることのできる支援や手当も異なります。
この記事では、精神科の診断書の基本的な知識から、うつ病を始めとする精神疾患の診断書を利用する目的、それに伴う費用、そして診断書を通じて受けられる支援や手当について詳しく解説していきます。
精神疾患を抱える方々が、自身の健康と生活の質を向上させるための情報を提供することを目指しています。
そもそも精神科の診断書とは?発行にかかる時間も解説

診断書に記載されている内容
診断書は、前述のように、医療機関で医師によって発行される公式の文書であり、発行する機関によってフォーマットについて多少の違いはありますが、患者の健康状態や診断された疾患、治療計画などについて記載されています。
しかし、診断書と聞いても、実際に実物を見たことがないと、一体診断書がどのようなものなのか想像することは難しいかと思います。
まずは、診断書には実際にどのような情報が記載されているのかについて解説していきます。
・患者の基本的な情報
氏名や生年月日、年齢などが記載されています。
・傷病名
医師による診察を受けた後、診断がついた場合に記載されます。ただし、ここには疾患名が書かれるだけではなく、疾患として診断がつかなかった場合には「抑うつ状態」のように記載されることもあります。
・病状の経過・治療内容
患者がどのような病状の経過で進んでいるか、そしてそれに対して実際にどのような治療を行なっていてどのような反応が得られているのかが記載されていることがあります。
・治療の見込み期間
治療にどれくらいの期間を要するのかが記載されていることもあります。
精神科では、休養が治療の一つとして行われることが多いため、「 ◯月◯日から ◯月◯日まで◯日間の休養が必要である」と想定される休養期間が明記されていることがあります。
・検査結果
精神疾患では、他の診療科のような検査をすることは少ないですが、検査結果があれば記載されることもあります。
【診断書の例】

発行にかかる時間は?
基本的に、そもそも診断証の発行には1 週間〜2週間ほどの期間かかるのが一般的と言われていますが、病院によってはこれと異なる場合もあります。
時間をかけて診断することが必要な場合もあり、初診で診断をつけることが難しいことがあります。
したがって、診断をつけるまでに時間がかかってしまい、診断書の発行には一定の期間が必要となる可能性があるということを念頭に置いておく必要があります。
ただし、必要時には、暫定的な内容で発行されることもあります。
精神科の診断書が必要となるケース・タイミング

次に、この診断書がどのような目的で使用されることがあるのか見ていきましょう。
休職・復職・保険請求における病状の証明
まず診断書と聞いてみなさんが真っ先に思い浮かぶべるであろうことは、患者が特定の疾患や病状を持っていることを証明するために使用されるということでしょう。
これは例えば保険請求に用いられるのはもちろんのこと、休職や復職の申請をするにあたって重要となることがあります。
前述の通り、精神科や心療内科で発行されるような診断書では、休養が治療の一環である場合があり、「◯日間の休養が必要である」といった記載が行われることがあります。
疾患名だけではなかなか休職を認めてくれないような会社であっても、この医師による休養の指示があることが休職の後押しになるのではないでしょうか。
また、休職をするにあたって、対面で診断書を渡すには精神的負荷が強いと感じているのであれば、郵送で診断書を会社に提出可能な場合があるのでぜひ利用してみてください。
休職についての詳しい内容は以下の記事を参照してください。
法的な要件
法的な事情や公的な要求に応じて、診断書の発行が必要となる場合もあります。
例えば、ニュースで重大犯罪を引き起こした犯人に対して、精神科医が事件当時の判断能力の有無を診断するといった話を耳にしたことがある方が多いのではないでしょうか。
心神喪失状態であったと判断された場合、法的な要求に則ってこの診断書が必要となります。前項「病状の説明」と似た話にはなりますが、このように、法的な要件によって診断書が必要となることがあるのです。
このように、さまざまな用途で用いられる診断書ですが、診断書の発行には、医師の診察と評価が必要であり、診断書に記載される内容は、当然患者の健康状態と個々の病状によって異なります。
また、診断書の発行には費用が発生することが多く、この点については後ほど解説をしていきます。

精神疾患の診断書を発行するメリット・デメリット
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次は、診断書を発行することによって患者さんが享受することのできるメリットと、被りうるデメリットについて解説していきます。
診断書を発行するメリット
1. 権利の擁護
診断書は、正式な医療文書として患者さんの状態を証明します。
これにより、前述のような休職や復職の申請、保険の適用といった場面において患者さんの権利を擁護してくれる書類となります。
2. 社会的支援への道
精神疾患を抱える多くの方々が、診断書の発行により社会的支援を利用することが可能になります。
診断書は、必要なサポートへと進むための通行証となり得るのです。受けることのできる社会的支援の実例については後ほど解説していきます。
3. 治療計画の明確化
医師によって作成される診断書には、治療の方針が具体的に記されている場合もあります。これは、患者さん自身が自分の治療過程がどのように行われていてどのように進めていくのかについて理解し、積極的に関与するためのロードマップとなります。
診断書を発行するデメリット
診断証の発行は精神疾患に苦しむ患者さんにとって非常にメリットが大きいため、多くの場合でデメリットをメリットが上回ります。しかし、デメリットについて知らないと少し怖いと感じる患者さんもいるでしょうから、一読していただければと思います。
1. プライバシーのジレンマ
診断書には患者さんの病名だけでなく、氏名や受診医療機関などの情報が含まれており、それらの情報は極めて個人的なものです。
このデリケートな情報を書類として発行するということは、常に紛失のリスクがつきまといます。
したがって、紛失しないように常に気を配る必要があります。
2. 精神疾患というラベル
これは診断書を発行するデメリットというより、診断がつくことによって場合によって生じうるデメリットですが、精神疾患の診断が「ラベル」として個人に貼り付けられると、患者さんが社会における見えない壁を感じる原因となりかねません。
自分が病気であるという現実を突きつけられたことによって、楽になる患者さんもいれば、辛い気持ちになってしまう患者さんもいますので、患者さんの気質による部分も大きいです。

精神疾患の診断書で受けられる社会的支援と手当

うつ病を始めとする精神疾患の診断を受け、診断書が発行された場合、様々な支援と手当を受ける資格を得ることができます。
これらの支援は、精神疾患に苦しむ患者が日常生活を取り戻したり、再就職したりといったことをサポートし、経済的負担を軽減する役割を果たしてくれます。
以下に、精神疾患の診断書によって利用可能となる主な支援と手当について詳しく説明します。
・自立支援医療制度
・障害年金
・精神障害者保健福祉手帳
・リワーク支援(職場復帰支援)
自立支援医療制度
厚生労働省によると、自立支援医療制度は以下のように定義されています。※1
「自立支援医療制度は、心身の障害を除去・軽減するための医療について、医療費の自己負担額を軽減する公費負担医療制度です。」
また対象者として、「精神通院医療:精神保健福祉法第5 条に規定する統合失調症などの精神疾患を有する者で、通院による精神医療を継続的に要する者」が含まれています。
自立支援医療制度を利用することで、精神疾患に悩む患者さんは向精神薬や精神科デイケアといった医療費の補助を受けることができるようになります。
障害年金
日本年金機構によると、障害年金は以下のように定義されています。※2
「障害年金は、年金加入中の病気やケガによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代の方も含めて請求することができます。障害年金の対象となる病気やケガは、手足の障害などの外部障害のほか、精神障害や内部障害も対象になります。」
このように、障害年金は、うつ病などの精神障害により生活や働くことが困難になった人々に対して、定期的な経済支援を提供することができる制度です。診察を受けた際に国民年金・厚生年金のいずれに加入しているかによって請求することができる年金が変わります。
精神障害者保健福祉手帳
厚生労働省によると、障害年金は以下のように定義されています。※3
「精神障害者保健福祉手帳は、一定程度の精神障害の状態にあることを認定するものです。精神障害者の自立と社会参加の促進を図るため、手帳を持っている方々には、様々な支援策が講じられています。」
精神障害者保健福祉手帳は、身体障害者手帳、療育手帳とともに障害者手帳として分類されるものです。
令和3 年度の調査によると、1,263,4601 人の患者さんがこの精神障害者保健福祉手帳の交付を受けています。
受けられる支援の具体例としては、障害者雇用での就職活動を可能にしたり、住民税や所得税が減税されたり、公共交通機関の割引がされたりなどがあり、様々な支援とサービスを提供するための手帳となっています。
リワーク支援(職場復帰支援)
リワーク支援は、うつ病などの精神障害を持ちながらも職場復帰を目指す人々に対する支援制度です。
精神疾患の診断書を持っていることで、専門のリワーク支援プログラムにアクセスし、職場復帰に向けたトレーニングやカウンセリングを受けることができる場合があるのです。
リワークプログラムは、医療機関や地域障害者職業センターなどの機関で受けることができます。
実際に行う内容としては、生活リズムの構築と安定化、心理的サポート、職場復帰に向けた個別の計画作成などが含まれます。
各支援制度や手当には、申請方法や条件が異なりますので、地域の保健所や専門の支援機関に相談し、正確な情報を確認することが重要です。

参考文献
*1)"自立支援医療制度の概要",厚生労働省,
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaisha
hukushi/jiritsu/gaiyo.html, (参照2023-11-15)
*2)"Q.障害年金の対象となる病気やケガにはどのようなものがありますか。",日本年金機構,
https://www.nenkin.go.jp/faq/jukyu/shougai/shougai-kiso/20161114.html, (参照2023-11-15)
*3)"障害者手帳について",厚生労働省,
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaisha
hukushi/techou.html, (参照2023-11-15)
精神疾患の診断書についてよくあるQ&A

Q.診断書作成にかかる費用はいくら?
A. 診断書の作成料金に関しては、病院によって設定している価格が異なるので一概にいうことができませんが、およそ2000 円~8000 円程度と考えておくと良いでしょう。
例えば、患者が指定した様式の診断書であれば1通5,500 円、病院の指定様式であれば1通 3,300 円といったような料金設置がされています。※4
また、診断書に関して注意しなければならないのが、診断書の発行は保険適用にならず全額自費負担になるということです。
病院で受けることのできる治療の多くは保険が適用されており、患者さんが窓口で払っている金額は実際に必要な金額の1 割-3 割であることがほとんどです。
しかし、この診断書は治療自体には関係がないため、保険適用とならずに全額自費で払う必要があるのです。
Q.可能な限り早く診断書をもらう方法は?
A. 診断書をできるだけ早く発行してもらうためには、精神科医師との初診時にその必要性を十分に伝え、現在の症状、疾患の進行の様子、そして診断書が必要とされる具体的な状況を明確に説明することが重要です。
ただし、前述の通り医師は患者の状態を十分に評価した上で診断書を発行するため、特に精神科の疾患では一回の診察で診断書を発行することはできない場合があります。
緊急を要する事情がある場合は、その旨を医師に伝え、適切な対応を検討してもらいましょう。
Q. 適応障害とうつ病の診断書の違いは?
A. 精神疾患の中でもよく耳にする「適応障害」と「うつ病」を、症状が似ているということもあって混乱して考えてしまっている方がいますが、この二つの疾患は全くの別物です。
適応障害は生活の変化や特定のストレス要因に対する反応として生じる短期間の障害であり、一般的に6ヶ月は超えないとされています。
一方、うつ病はより長期にわたる深刻な抑うつ状態と特徴づけられます。
また、適応障害はうつ病とは異なり、休日には症状が軽快したり、趣味を楽しむことができたりといったケースもあります。したがって、適応障害の診断書は、通常、短期的な治療や支援を必要とし、うつ病の診断書は、より長期的な治療計画や継続的な支援を必要とすることが多いです。
自分がどちらの病気であるかを患者さんが判断する必要はありませんが、疾患によっては治療計画や必要なサポートが異なるため、これらを混同してしまうと話が噛み合わないと感じてしまいます。
この理解を十分にしておくことが重要です。
うつ病と適応障害の違いについては以下の記事で詳しく解説しています。
自分の症状がどんな病気に関連するか気になる方は、症状チェッカーで確認してみましょう。

参考文献
*4)"診断書・証明書等の文書作成依頼",東京大学医科学研究所附属病院,
https://www.h.ims.u-tokyo.ac.jp/nyuin/bunsho.html, (参照2023-11-15)
精神科の診断書 まとめ

精神科の診断書は、精神疾患を管理し、適切なサポートを受けるために不可欠なツールであり、精神疾患に悩む患者さんの強い味方になってくれるものです。
この記事を通じて、診断書の基本的な概念、うつ病を始めとする精神疾患の診断書の使用目的、それに伴う費用や支援・手当の情報を解説してきました。
診断書は、あなたの精神状態を正確に理解・記録し、必要な支援を受ける手助けとなります。
この記事で説明した通り、診断書を利用することで、自立支援医療制度や障害年金、リワーク支援など、多くの支援プログラムへのアクセスが可能になります。
精神疾患を抱える方々は、様々な困難に直面し、深い絶望に囚われてしまうといったこともあるかもしれませんが、適切な正しい情報とサポートを得ることで、より良い生活の質を追求することができます。
この記事が、精神疾患を抱えるあなたやあなたの家族、友人にとって、有益で実用的な情報を提供し、少しでもお役に立てたることを願っています。
そして、この記事を読んでさらなる情報を知りたくなった場合は、信頼できる精神科医や心療内科医に相談することをお勧めします。
最後に、何よりも重要なことですが、必要な時には適切な診断と治療を受ける勇気を持ってください。この記事が、あなたがより良い生活を送る一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。