睡眠導入剤(睡眠薬)は精神科オンライン診療でも処方される?不眠症治療に用いられる薬の種類を紹介

監修者紹介
別府拓紀
大学病院、精神科病院、専属産業医などを経て現在精神科病院で地域の精神科医療に従事 精神保健指定医、精神科専門医、臨床精神神経薬理学専門医、老年精神医学会専門医、公認心理師、スポーツドクター
別府拓紀
大学病院、精神科病院、専属産業医などを経て現在精神科病院で地域の精神科医療に従事 精神保健指定医、精神科専門医、臨床精神神経薬理学専門医、老年精神医学会専門医、公認心理師、スポーツドクター

「なかなか眠れない」「寝ている途中で起きてしまう」といった悩みはありませんか?

上記の症状がつづき、仕事や学校、日常生活に悪影響をおよぼしている場合、不眠症の可能性があります。不眠症を改善するには、睡眠導入剤による治療が必要な場合があります。

この記事では、精神科オンライン診療で処方される睡眠導入剤とその特徴ついて解説します。ぜひ最後まで読んでみてください。

睡眠導入剤とは?オンライン診療でも処方される?

睡眠導入剤(睡眠薬)とは、睡眠をうながす効果がある薬です。不眠症の治療や、メンタル不調によって睡眠が十分に取れていない患者さまに対して、医師が必要と判断したときに処方されます。

似たような名前の薬に「睡眠改善薬」がありますが、こちらは睡眠導入剤よりも効果はマイルドで、ドラックストアでも購入できます。睡眠導入剤は医療機関でしか取り扱っておらず、入手するには医師の処方箋が必要です。

睡眠導入剤はオンライン診療でも処方されます。ただし、麻薬および向精神薬に該当する薬については、初診の患者さまには処方できません。初診で処方できない薬の具体例については、のちほどご紹介します。


オンライン診療で処方される睡眠導入剤の種類

オンライン診療で処方される睡眠導入剤の種類

エニキュアで処方される睡眠導入剤の種類を8つご紹介します。薬の種類によって、効果の持続時間や副作用などが異なるため、詳しくみていきましょう。

デエビゴ®︎

デエビゴ®︎は、不眠症治療の新たな選択肢として注目されている睡眠導入剤です。オレキシン受容体拮抗薬という新しい分類に属し、従来の睡眠薬とは異なるメカニズムで効果を発揮します。

分類: オレキシン受容体拮抗薬

特徴:
⚫︎2020年発売の比較的新しい薬
⚫︎入眠障害や中途覚醒に効果的
⚫︎依存性が比較的低い

副作用:
⚫︎頭痛、めまい、疲労感、悪夢
⚫︎まれに金縛り

デエビゴは、覚醒を促すオレキシンの働きを抑えることで自然な眠りを誘導します。従来の睡眠薬と比べて依存性が低いといわれていますが、個人差があるため、医師の指示に従って慎重に使用する必要があります。新しい薬で依存性も引くと言われメリットが多いように思われますが、副作用として悪夢をみることがあり、注意が必要です。



ベルソムラ®︎

ベルソムラ®︎は、デエビゴと同じオレキシン受容体拮抗薬に分類される睡眠導入剤です。入眠作用はデエビゴに劣りますが、中途覚醒にはベルソムラのほうが効きやすい場合もあります。ベルソムラはせん妄にも有効と報告されている論文もあります。

ベルソムラの副作用は、睡眠の持ち越しや頭痛、めまい、疲労感などです。眠気が翌朝まで残ってしまうのは、デエビゴと同様に効果に個人差があります。また、デエビゴと同様にベルソムラも、患者さまによっては悪夢を見る方もいます。


ロゼレム®︎

ロゼレム®︎は、体内時計の調整に関わるメラトニンに着目した睡眠導入剤です。自然な睡眠サイクルの回復を促す特徴があります。


分類: メラトニン受容体作動薬

特徴:
⚫︎中途覚醒、早朝覚醒、熟眠障害に効果的
⚫︎効果発現まで数週間かかることがある

注意点:
⚫︎特定の抗うつ薬(デプロメール、ルボックス)との併用不可

ロゼレムは、依存性が低いと言われています。一部の抗うつ薬との相互作用に注意が必要です。



マイスリー®︎

マイスリー®︎は、速やかな入眠を促す非ベンゾジアゼピン系の睡眠導入剤です。短時間作用型であることが特徴です。


分類: 非ベンゾジアゼピン系

特徴:
⚫︎即効性あり、比較的作用時間が短い

副作用:
⚫︎健忘のリスクあり

注意点:
⚫︎統合失調症や双極性障害がある場合は処方されない

マイスリーは、入眠困難に特に効果を発揮しますが、健忘のリスクに注意が必要です。また、特定の精神疾患がある場合は使用が制限されます。



ルネスタ®︎

ルネスタ®︎も非ベンゾジアゼピン系に属し、マイスリーと同様に即効性があります。入眠障害と中途覚醒の両方に効果を示します。


分類: 非ベンゾジアゼピン系

特徴:
⚫︎即効性あり、入眠障害と中途覚醒に効果的

副作用:
⚫︎味覚異常、傾眠、のどの渇き

注意点:
⚫︎他の向精神薬との併用で健忘や幻覚のリスク

ルネスタは、比較的安全性の高い睡眠薬ですが、他の向精神薬と併用する場合は注意が必要です。特に、味覚異常という特徴的な副作用に注意が必要です。


ハルシオン®︎

ハルシオン®︎は、ベンゾジアゼピン系の中でも特に即効性が高い睡眠導入剤です。


分類: ベンゾジアゼピン系

特徴:
⚫︎即効性が高く、作用時間が短い

注意点:
⚫︎依存や副作用のリスクが比較的高い
⚫︎オンライン診療の初診では処方不可

ハルシオンは強めな睡眠効果を持つ反面、依存のリスクも高いため、使用には慎重な判断が必要です。


サイレース®︎

サイレース®︎は、ハルシオンと同じベンゾジアゼピン系ですが、より長時間の効果を持つ睡眠導入剤です。

分類: ベンゾジアゼピン系

特徴:
⚫︎作用時間が長い

注意点:
⚫︎副作用や依存性のリスクが高い
⚫︎翌日の眠気や倦怠感に注意
⚫︎オンライン診療の初診では処方不可

サイレースは、長時間の睡眠維持に効果がありますが、翌日まで眠気が残るリスクがあります。依存性も高いため、長期使用には注意が必要です。


レンドルミン®︎

レンドルミン®︎は、中間的な作用時間を持つベンゾジアゼピン系睡眠導入剤です。


分類: ベンゾジアゼピン系

特徴:
⚫︎幅広い不眠症状に効果あり

副作用:
⚫︎眠気の持ち越し、ふらつき

注意点:
⚫︎長期服用で依存のリスクあり
⚫︎オンライン診療の初診では処方不可

レンドルミンは、入眠障害から中途覚醒まで幅広い不眠症状に効果を示しますが、依存のリスクや副作用に注意が必要です。他のベンゾジアゼピン系睡眠薬同様、オンライン診療の初診では処方できません。








オンライン診療での睡眠導入剤処方に関するQ&A

オンライン診療での睡眠導入剤処方に関するQ&A

オンライン診療における睡眠導入剤の処方について、よくある質問に回答します。睡眠導入剤に関して気になる点があれば、以下をご参照ください。

Q1.オンライン診療は保険適用される?

A1.条件により異なります。多くの場合、初診は対面が必要で、再診からオンライン診療が可能です。詳細は各医療機関にご確認ください。

オンライン診療の保険適用は、2018年の診療報酬改定で認められましたが、適用条件や対象となる診療内容には制限があります。睡眠導入剤の処方に関しては、初診は原則として対面診療が必要で、その後の経過観察や薬の調整などの再診でオンライン診療が可能となる場合が多いです。


Q2.オンライン診療で処方可能な睡眠導入剤は?

A2.医療機関によって異なりますが、一般的に依存性の低い非ベンゾジアゼピン系やメラトニン受容体作動薬、オレキシン受容体拮抗薬が選択されることが多いです。例えば、デエビゴ、ルネスタ、ベルソムラ、ロゼレムなどが該当します。

オンライン診療では、患者さんの状態を直接観察することが難しいため、比較的安全性の高い薬剤が選択されます。また、医師の判断により、患者さんの症状や既往歴、他の服用中の薬剤などを考慮して、最適な睡眠導入剤が選択されます。


Q3.オンライン診療の初診で処方できない睡眠導入剤とは?

A3.先ほど紹介したなかで、厚生労働省が指定する向精神薬に含まれる以下の薬剤は、オンライン診療の初診では処方できません:

・サイレース

・ハルシオン

・マイスリー

・レンドルミン

これらの薬剤は、依存性のリスクや副作用の観点から、慎重な処方が必要とされています。そのため、初めての処方の際には、対面での詳細な診察と説明が必要とされ、オンライン診療の初診では処方が制限されています。


Q4.オンライン診療と対面診療との違いは?

A4.主な違いは以下のとおりです。
身体的な診察が制限される
患者の表情や態度の細かな観察が難しい
通信環境による制約がある

ただし、適切な問診と患者の正確な情報提供により、そのデメリットを完全ではないにしてもある程度補填することができるでしょう。

オンライン診療では、ビデオ通話を通じて医師と患者が対話を行います。このため、聴診や触診などの身体的な診察は難しく、また微妙な表情の変化や身体言語を捉えにくいという制約があります。一方で、患者さんにとっては通院の負担が軽減され、自宅など安心できる環境で診療を受けられるというメリットもあります。


オンライン診療での睡眠導入剤処方に関するQ&A まとめ


まとめ:睡眠導入剤はオンライン診療でも処方される

まとめ:睡眠導入剤はオンライン診療でも処方される

不眠症を改善するには、睡眠導入剤による治療が有効です。睡眠導入剤の効果や作用時間、副作用は種類によって異なるため、医師と相談し、用量・用法を守って服用しましょう。

不眠症状に加えて、気分が落ち込んでいたり、好きなことが楽しめなかったりなどの症状が見られる場合は、メンタルクリニックの受診をおすすめします。オンライン診療は、対面診療と比較して予約が取りやすいため、早期発見・治療につながりやすく選択肢のひとつとなりえるでしょう。。

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参考文献:

厚生労働省 オンライン診療で処方を受けるに当たって注意が必要なお薬一覧

厚生労働省 病院・診療所における向精神薬取扱いの手引 p6

厚生労働省 オンライン診療で処方を受けるに当たって注意が必要なお薬一覧

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