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学生とメンタルヘルスの病気:学生に発症しやすいメンタルの病気は?
1.はじめに
学校生活でストレスを抱え、心が病気になってしまう10代の学生は多くいます。
勉強や部活、人間関係等プレッシャーや緊張感を多く感じる学校生活で、自己形成し始める思春期の学生にとっては、様々なストレスが押し寄せます。
今回は、特に中高生のうつ病の症状や、10代に起きやすい病気、治療方法等について解説します。
2. 学生(中高生)のうつ病の特徴は?

コロナ禍に行った「子どもの心の健康」に関する調査によると、中学生の24%、高校生の30%に、中等度以上のうつ症状があることが分かっています。*1)
中には学校に行くことができず、不登校になってしまう学生も多いです。
10代学生のうつ病の症状
大人のうつ病の特徴としては、「不眠」「落ち込む」「食欲が湧かない」「涙が止まらない」などの症状が挙げられます。
10代のうつ病も大人のうつ病と医学的には違いはありませんが、学生のうつ病は、立場や責任等の違いから、大人の症状とは少し異なった症状を発症する場合があります。
10代のうつ病は、別名「思春期うつ」とも呼ばれています。
学生(中学生・高校生)のうつ病の症状としては以下のようなものがあります。
・食欲が減るよりも、「食欲増加」
・寝れないよりも、「過眠」
・落ち込むよりも「イライラ」が止まらない
・やる気が出ない
・一日で気分の変動が大きい
・引きこもるようになる(学校に行かないなど)
大人のうつ病では、憂鬱な気分になったり、口数が少なくなったりするなどが特徴ですが、10代の子供の場合は、自分の感情をうまく表現することができず、イライラしたり、感情が爆発して反抗的な態度で表そうとする傾向があります。
また、これらの症状が続くと、学校に行けなくなり不登校に繋がる恐れもあります。
うつ病に関する詳しい内容は以下の記事でも解説しています。
併せてお読みください。

思春期うつ病の主な原因は?
学生、特に中高生のうつ病の原因としては、学校内での人間関係トラブルや、勉強のプレッシャー、そして思春期の家族との関わり方等などが挙げられます。
①人間関係トラブル
「周りが自分をどう思っているのか不安」
「仲間外れにされないか不安」
「本音で話せる友達がいない」
「仲良しグループ」を作ることが多い中学校、高校の学生生活では、このような悩みを抱える学生が多いです。常に周りからの見られ方に気を使い、周りの言葉や目線などに敏感に反応するようになるため、常に神経を使っている状態になります。
「仲良しグループ」に所属し関係性を築くことで、自己アイデンティティを確率する10代の若者にとって、「友達との関係性」は優先度が高く、たくさんのエネルギーを注ぎます。
そのため、人間関係のトラブルは学生にとってダメージが非常に強い原因となるのです。
②周囲との比較
勉強や部活など、常に順位を競わなければいけない環境なので、周りと自分を比較し自信を失うだけでなく、自分自身の価値まで過小評価し始めることがあります。
内閣府が行った『高校生の生活と意識に関する調査』によると、「自分はダメな人間だと思う」という質問に対して、「そう思う」「まあそう思う」と答えた高校生は72.5%もいました。*2)
③勉強
勉強や成績の焦りからストレスを感じ、うつ病に繋がるケースもあります。
例えば、先生や家族の期待にしっかり応えようとする真面目な学生が、「中学校の時は成績優秀であったのに、高校に入ったら授業に追いつけなくなった」などとストレスを感じ、うつ病に繋がる場合があります。
④進路・将来への過度な不安
高校生によくあるストレスの原因として、受験や就職、将来への不安が挙げられます。
多くの高校生にとっては、初めて将来の選択に真剣に向き合う時期です。
もちろん不安を抱くことは自然であり、真剣に将来と向き合うことは大切なことです。
しかし、将来に対して過度に不安になり重く受け止めすぎてしまい、最終的にうつ病を患ってしまう学生もいます。
「この大学に受からなかったら人生が終わるかもしれない...」
「この選択は正しくないかもしれない」
などという考えが頭を過ぎる場合には、家族や先生、スクールカウンセラーなどに相談してみることをおすすめします。
⑤SNS
若者に限らず、SNSとうつ病は深く関係しています。
実際に、米保健福祉省の調査によると、1日に平均3時間以上SNSを利用している人は、うつ病のリスクが倍増するという結果があります。*3)
アイデンティティが確立され始める10代の時期は、SNS上の他人からの意見や比較に影響を受けやすいです。また、依存性から不眠症が起きたり、昼夜逆転の生活をし始めるとうつ病にかかりやすい傾向にあります。
⑥生活習慣
真面目で優等生のみがうつ病を発症するというわけではありません。
昼夜逆転の乱れた生活習慣を送り、不登校になっている学生も、うつ病にかかることがあります。
昼間に日光を浴びなかったり、睡眠時間が短かったり、運動不足などはうつ病の原因です。友人から仲間外れにされることを恐れたり、先生や親から怒られることを気にして、自分ではダメだと分かっていながらもこの生活習慣をやめられない、という理由からうつ病発症に繋がる恐れがあります。
また、学生生活は、受験勉強で夜遅くまで勉強をしたり、朝早くから始まる部活などで寝不足ぎみになることが多いです。
10代は7〜8時間は睡眠時間を確保した方が良いと言われています。
⑤家族関係
家族との関係性がうつ病の原因となることも珍しくありません。
・親子間でのストレス
親が子供に対して「高圧的」「暴力」「過度に干渉」などの態度を取った場合です。
未成年の子供にとって家族と関係を切ることは難しく、ストレスをどこにも打ち明けられないことが多いです。
・親同士のストレス
親同士のコミュニケーションや態度も子どもに影響を与えることがあります。
親同士で常に言い争いをしていたり、子どもへのコミュニケーションが減るなど、長期間に渡るストレスが蓄積されて、結果子どもがうつ病を発症するケースもあります。

参考文献
1)”コロナ×こどもアンケート 第4回調査 報告書 ”,国立研究開発法人国立成育医療研究センター,2023-12-18,https://www.ncchd.go.jp/center/activity/covid19_kodomo/report/CxC4_finalrepo_20210210.pdf, (参照2024-2-27)
2)”「高校生の生活と意識に関する調査」における国際比較”,文部科省,https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/gijiroku/__icsFiles/afieldfile/2017/06/23/1387211_08_1.pdf, (参照2024-2-27)
3)”SNSの多用「若者に重大なリスク」米公衆衛生トップ”,日本経済新聞,2023-5-24,https://www.nikkei.com/article, (参照2024-2-27)
3. 学生に発症しやすい心の病気とは?

学生によく発症するメンタルの病気
ストレスから心に病を発症する学生に起きる最悪のケースとしては、「自殺」です。
10代の若者はまだ前頭葉が未熟なため、他の年代と比較して「衝動性」が強いです。
うつ病以外にも、合併症として10代の学生に起こりやすい病気がいくつかあります。
・不安障害、強迫性障害、パニック障害
・双極性障害
・統合失調症
・摂食障害
・発達障害、起立性調節障害
・思春期妄想症
①不安障害、強迫性障害、パニック障害
不安障害は10代の若者に特に多い病気です。
対人不安症等で学校に行くことが怖くなり不登校になったり、教室の中まで入れなかったりすることがあります。
また、勉強や部活のプレッシャーや人間関係の緊張で「息切れ」や「動悸」が止まらず、パニックに陥ることもよくあります。
「また発作が起きたらどうしよう」という先に起きる恐怖を感じやすいです。
強迫性障害の症状としては、何度も同じことを繰り返ししてしまいます。
例えば、「手を洗ったのにまだ汚いと勘違いして何度も何度も手を洗う」「何かをする時回数にこだわりを持つ」「誰かを傷つけてしまう不安に囚われる」などが特徴として挙げられます。
強迫性障害に関する詳しい内容は以下の記事でも解説しています。
併せてお読みください。
②双極性障害
若い人の場合、躁状態よりも抗うつ状態の方が見られる場合が多いです。
躁状態になると睡眠不足になるので、突然イライラが止まらなくなったり、攻撃的になります。
また、誇大妄想が起こり、「自分は素晴らしい才能がある」などといった激しい思い込みをするようになります。
中には、性行為や飲酒、運転など自分では責任を取ろうとしない行動に走ることがあります。
双極性障害に関する詳しい内容は以下の記事でも解説しています。
併せてお読みください。
躁うつ病の人は攻撃的?双極性障害の特徴やサポートの方法を解説
③統合失調症
10代の若者は、幻覚、幻聴、妄想などの症状が重症化する場合があります。
引きこもりがちになり、異常な妄想を強く抱くようになります。
学校に適応できないストレスがどんどん蓄積され、様々な症状が現れます。
以下の症状が挙げられます。
・圧迫感があって電車に乗れない
・自分の悪い噂が学校中に広まっていると思う
・頭の中にもう一人の自分がいて話しかけてくる
・人が自分を馬鹿にしている、笑っているように感じる
・人から常に監視されているように感じる
統合失調症に関する詳しい内容は以下の記事でも解説しています。
併せてお読みください。
④摂食障害
摂食障害は女性に発症する割合が高いと言われていますが、近年では性差はあまりなくなってきています。
「太っていると言われて何も食べられなくなった」「痩せないと美しくなれない」などという考えに襲われます。
近年SNSの影響から他人と自分の体型を比較し、「もっと痩せなければいけない」と強迫観念に囚われる人が多くなりました。
症状としては、食事ができなくなるだけではなく、食べ物を吐いたりするようになります。
摂食障害に関する詳しい内容は以下の記事でも解説しています。
併せてお読みください。
⑤起立性調節障害
起立性調節障害は思春期の子どもに多い症状です。
「怠けているだけだ」と勘違いされることも多く、病気の理解が未だ薄いのが現状です。
「立ちくらみ」「長時間立ってられない」「疲れやすい」「頭痛」などの症状があります。立ち上がる際に「動悸」「失神」などが起こる場合があります。*4)
原因としては、学校の精神的ストレス、ホルモンバランス、遺伝です。
自律神経の乱れで、交感神経と副交感神経のバランスが崩れることで発症します。
⑥思春期妄想症
思春期妄想とは、「自分の身体の異常によって周りに迷惑をかけている」という妄想に囚われてしまう症状です。
思春期妄想症には、自己視線恐怖、自己臭恐怖、醜形恐怖などがあります。*5)
・自己視線恐怖
「自分の視線がおかしいので、周りに不愉快を与えているのではないか」という妄想
・自己臭恐怖
「自分の身体から嫌な匂いが出ているので、周りに迷惑をかけているのではないか」という妄想
・醜形恐怖
身体の一部にこだわり、周りから「自分の身体は醜いと思われている」という妄想
「周囲に迷惑をかけてしまっている、周りに申し訳ない」という感情を抱き、周囲と距離を置いたり、孤立するようになります。
自分の症状がどんな病気に関連するか気になる方は、症状チェッカーで確認してみましょう。あなたの気になる症状から該当する心の病気を調べます。

適応障害、自律神経失調症の可能性も
うつ病などではなく適応障害のケースもあります。
進学して新しい学校に適応するのが難しい場合や、クラス替えで新しい友達がなかなか作れない、など学校生活の中でも様々な環境の変化はあります。
人間関係が原因
・新しい先生と仲良くなるのが難しい
・すでにグループがいくつかあるので、仲良くなりづらい
・趣味が合う友達が見つからない
・昔よりも価値観などが合うと感じる友達ができない
勉強や部活が原因
・中学から高校に進学して、勉強量が増えストレスを感じる
・学年が上がり自分自身で考えて行動することが増えた
・部活の上下関係に窮屈さを感じる
・勉強量が増え、睡眠時間が以前よりも減った
ストレスの発症源が確認でき、心身に不調が出ているといった場合は、心療内科を受診してみることをおすすめします。
適応障害に関する詳しい内容は以下の記事でも解説しています。
併せてお読みください。
参考文献
4”)起立性調節障害症状について”,厚生労働省,https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000055696_2.pdf, (参照2024-2-27)
5)”社交不安障害の診断と治療”,北海道大学保健センター・大学院医学研究科精神医学分野, https://journal.jspn.or.jp/Disp?style=ofull&vol=117&year=2015&mag=0&number=6&start=413, (参照2024-2-27)
4.学生の心の病気の治療法は?誰に相談すればいい?

治療方法を解説
①休養・環境調整
学校でストレスを感じる原因があるのであれば、まずは一旦学校から距離を置いてゆっくり休ませてあげることが重要です。
ただ、適応障害やうつ病にかかってしまう学生は、特に真面目で責任感が強い子が多いため、学校を休んだり早退することに強い抵抗を感じることもあります。
その場合は、担任やスクールカウンセラー、心療内科の先生などと相談して、休養しやすいよう環境を整えてあげることが必要です。
②認知行動療法(カウンセリング)
認知行動療法とは、「認知」機能に焦点を当て、本人の凝り固まった思考を柔軟にほぐし、新しい物事の捉え方、気づきを発見してもらう治療法です。
専門家と対話形式で行われ、カウンセリングを通して行っていきます。
認知療法とは、
考え方の「くせ」をまず本人が認識し、否定的な考え方の改善を計り、「もしかしたらできるかも」とポジティブな思考を身につけていく方法です。
行動療法とは、患者とセラピストとの間で治療目標を立て、それに向け小さなステップで恐怖や不安に対して適切な行動を促します。
カウンセリングは、心療内科や精神科で行っているところもありますが、診療科とは別で、心理カウンセリングのみを行っているクリニックもあります。
未成年、学生の場合は、保護者と一緒にカウンセリングを受けることも可能です。
③薬物治療
環境調整や休養だけで体調が変わらなかった場合は、薬物治療を行います。
心療内科または精神科を受診し、処方してもらいましょう。
子どもに薬を飲ませることに抵抗を感じる方も多いかもしれませんが、最初は効果の低い薬を少しずつ処方していき、本人の副作用や症状に合わせて治療を行います。
本人の判断で勝手に服用を辞めるのではなく、医師の指示通りに飲めば、再発防止にも繋がります。
学生が相談できるところは?
心身に不調を感じたり、自分の行動に違和感を感じ始めたら、まずは担任の先生や家族、信頼できる保健の先生、カウンセラーなどに相談してみましょう。
先生も生徒の違和感に気づいていない場合もあるので、相談してみることで、学校側で環境を調整してくれる場合があります。
心の病気は早期発見・早期治療が何よりも大事です。
放っておくと重症化する恐れもあります。
心療内科や精神科を受診し早めに治療に専念するためにも、家族に相談し連れて行ってもらいましょう。
心療内科・精神科を初めて受診する方向けに、下記の記事で、初診について詳しく解説しています。
初診の流れや内容に不安を感じている方はぜひ併せてお読みください。
精神科の初診が不安な人必見!初診の内容、流れ、医師に伝える際のポイントなどについて解説
もし、誰にも相談できないという場合、以下のような相談窓口があります。
電話で相談ができ、相談内容や年代ごとに窓口が異なる場合もあります。
・地域の保健所や保健センター
・地域の児童相談センター
・地域の教育センター
・電話相談窓口 まもろうよこころ
・よりそいホットライン

5.まとめ:学生のメンタルヘルスと心療内科の受診

「自分がうつ病になってしまった」と認識すると、将来が不安で仕方ないと感じるかもしれません。
中学生、高校生の時期に心の病気になったとしても、早めに適切な治療を行えば必ず治りますし、この先の将来を明るく作っていくことはできます。
「一生この病気で暗い人生だ....」などと思う必要は全くありません。
「周りからの見え方が気になる」「怒られるのではないか」「甘えだと思われるかも」などと思ってしまい、一人で抱え込むことは絶対にやめましょう。
親や先生など側で理解して寄り添ってくれる大人はたくさんいます。
親に相談しづらい場合は、学校のカウンセラーや地域の相談窓口などにも頼ってみてください。
周りの大人は子どもを責めたり、自分自身の育て方や教え方を責めたりすることはやめましょう。
本人が将来どうやって安心して自分を受け入れ、成長していくことができるのか、一緒にサポートして考えてあげることが大人の役割です。
まずは心身に不調を感じたら、心療内科へ早めに受診をしてみましょう。
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